週1回2時間だけ? こども誰でも通園制度に疑問「短すぎ」「泣いて終わり」
孤育てから「リフレッシュできた」
働いていなくても保育施設に子どもを預けられる「こども誰でも通園制度(仮称)」。モデル事業を利用して生後5カ月の長女を預ける女性(38)は、「預ける前は子どもをかわいく思えない時があった」と孤独だった子育てを振り返りました。
遠方の両親に頼れず、平日は自宅で2人きり。「なんで泣くのか分からず、すごく不安でした」。集合住宅で泣き声が気になり、昼間は散歩に連れ出し、夜中も長女が動いたと感じたら起きてミルクをつくって泣かれないようにと見守る日々。午後8時に仕事を終える夫に「1秒でも早く帰ってきてほしかった」と話します。週2日、朝から夕方まで預けることで「ボロボロでしたが、家事やリフレッシュもできて元の自分に戻っている気がします」と笑顔を見せてくれました。
モデル事業の次の段階で、条件が…
ただ、本格実施前の次のステップとして、こども家庭庁が年度内にも開始を目指す試行的事業では、「生後6カ月~2歳」「月10時間を上限とする」などの条件が付くことになりそうです。SNS上では、「短すぎる」「泣いて終わり」と訴える声が上がっています。
それでもモデル事業で国と同様の条件にしている東京都八王子市では、保護者から「自分で靴が履けるようになった」「人見知りが減った」と成長を喜ぶ声があるそうです。ただ、0~1歳は親が付き添う形をとっています。担当者は「本当はもう少し長く預かれると、保護者のリフレッシュになるのでは」と話します。
市長会が緊急提言「利用者目線で」
一方、全国の政令市でつくる指定都市市長会は11月28日、「上限を設けず地域の実情に応じて柔軟な制度を」とこども家庭庁に緊急提言しました。副会長の高島宗一郎・福岡市長は「週に1回2時間の利用では、家に帰って掃除や洗濯すらままならない」と批判し、予算措置を求めました。福岡市で行うモデル事業では、122人が利用し、270人近くがキャンセル待ちだそうで「利用者を拡大したい中、この制度では逆行する。利用者目線で考えてほしい」と指摘しました。
ほかにも保育士らの処遇改善、要支援家庭への対応など重要な課題が山積みで、こども家庭庁は試行的事業に取り組む中で検証するとしています。果たして預かる側の不安を払拭し、親子が安心して通える制度になるのか。政府は子どものために予算をかける覚悟があるのか、引き続きお伝えしていきます。
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