パパ、ゴメンねって言って〈古泉智浩さんの子育て日記〉28
気持ちと実際のズレ もどかしさで涙
3歳の里子・ぽんこちゃんは、毎晩寝る前に「ゲームする」と言って、僕の部屋で「モンスターハンター」をします。とはいえ、コントローラーをいじってキャラクターをあちらこちらに移動させるだけで、狩りは僕がします。
ところがある日、「にいにいちゃんもパパもゲームができるのに、ぽんこちゃんはゲームができない」と言って泣きだしました。だからといって、コントローラーの使い方を詳しく教えて本格的にゲームを始めても困ります。泣きだしたのはその日だけだったので、ほっとしました。
そんなぽんこちゃんは、もうすぐ誕生日です。
「12月が誕生日だよ、プレゼントは何がいいの?」
「いつ?」。ぽんこちゃんが聞きます。
「12月だよ」
「いつ?」
「だから12月」
「うるさい!」
ぽんこちゃんが急に怒りだしました。自分の誕生日が来ることは分かるようですが、まだ月日の概念がないため、12月と言われてもなんのことか分からず、イライラしているようです。
ぽんこちゃんは、7歳のお兄ちゃんと自分を同格のように思っている節があります。しかし、お兄ちゃんが理解していても、ぽんこちゃんには理解できないことがあります。気持ちと実際のズレで、もどかしさを感じているようです。お兄ちゃんにはそんな時期はありませんでした。
リンゴの食べ方で、強めに叱ったら…
また別の日には、ぽんこちゃんがリンゴを何切れも自分のお皿にのせて、少しずつかじっていました。「ぽんこちゃん、ダメだよそんな食べ方、1つ食べ終わってから次のを食べなさい」。強めに叱りました。大抵全部食べ切らず、ちょっとずつかじったリンゴが残ります。
するとその日の夜、布団で寝かせようとしていた時にぽんこちゃんが言いました。
「ぽんこちゃん、パパが怒ると悲しい気持ちになる」
え、きつく叱りすぎたかなと思いました。
「だからパパ、ぽんこちゃんゴメンねって言って」
お行儀の悪い食べ方をしたのはぽんこちゃんなので、叱って当然なのですが、切なそうに言われてしまい「ぽんこちゃん、ゴメンね」と謝りました。
「いいよ」。ぽんこちゃんは許してくれました。釈然としないのですが、自分の気持ちをこんなにも素直に言葉にできるのは素晴らしいことだと思いました。 (漫画家)