自由研究の題名は「愛情とこだわり」 飛騨旅行で感じた成長〈清水健さんの子育て日記〉54
ちゃんと「取材」をしている!
「牛たちをびっくりさせちゃいけないよ!」。黒毛和種の立派な飛騨牛に去年はほとんど近づけなかった息子から、今年はなぜか僕が注意されてしまった。牛たちをそっと、じっくりと観察した息子の「1年の成長」。
夏休みの自由研究を兼ねて、親友の「飛騨牛」生産者がいる、岐阜県飛騨地方に家族旅行。夜は下呂温泉に泊まり、川の音が聞こえる露天風呂で、息子はおもいっきり足を伸ばして「ストレス発散だね!」って。「パパも運転、お疲れさま」とちょっと優しい。
翌日、自由研究のために牛舎に向かう。家で、聞くことを事前にノートにまとめていた息子。聞けるのかな? 「牛を育てる上で一番、大事なことは何ですか?」「どれくらいエサを食べるのですか?」。ちゃんと「取材」をしている!
「牛たちは1日18時間寝ているんだよ!」と教えてもらうと、「その他の時間は何をしているの?」。牛舎の広さを知ると、「いつも野球観戦に行く京セラドームぐらいかな?」。1つを知るといろんな不思議が出てきて、また聞いたり調べたり。知ろうとすることの大切さ。今の僕はできている?
愛すること、誇りをもつこと…
家に帰ってまとめた自由研究。タイトルは「愛情とこだわり」。息子と話している時も、牛の声が聞こえると「ごめん、ちょっと待っててね」とその場を離れて牛の様子を見に行く親友。その姿を見た息子は「お休みはあるんですか?」。
畜産農家は今、エサ代の高騰など厳しい状況。その中、頑張っている、とことん「そのもの」を愛している人の話を聞く。そんな時間をこれからもつくってあげたいなと思う。自由研究の内容はもちろんだけど、人に喜んでもらうために牛たちを愛すること、自分たちの仕事に誇りをもつことなど、多くを感じた飛騨の旅だとうれしい。
真夏日でも牛舎の中は心地よい風。「この飛騨の自然が重要なんだよ!」と教えてもらう。近くの川は泳ぐ魚が見えるほど透き通っている。「この自然がいいんだね!」と言いながらも入ろうとはしない。どうもそれは怖いらしい(笑)。その姿に、妻も泳ぐのは苦手だったなと思い出す。
親が思う以上に息子は成長してくれている。2人で遠くをボーッと眺めながら「また来ような!」って。飛騨から帰り、写真の前で、「ただいま」って手をあわせる。僕たちには「帰る場所」がある。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。8歳の長男誕生後に妻を亡くし、シングルファーザーに。
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