ママが隣にいない息子の「なぜ?」に何度でも答えたい〈清水健さんの子育て日記〉57
乳がん? 自分なりに理解しようと
「ちょっと歩こうか!」という僕の提案に「いいね!」と笑顔で応じる息子。ふたりで映画を見た帰り、イルミネーションで飾られた夜の大阪・難波を歩きました。観光客も多くにぎやか。いつもと違う雰囲気に圧倒されたのか、手をつながなくなってきた息子がソッと手をつないできた。うれしさとともにドキッとした僕がいました(笑)。
僕は最近、息子が髪を切る時は離れた場所にいます。「髪がサラサラだね!」と言われた息子が、「内緒だよ、パパが使っている高いリンスを使っているんだ」とうれしそうに美容師さんに話していたそう。乾燥肌の息子は化粧水を使っている。洗顔後、僕の隣で肌のハリを確かめるように、化粧水をとった両手で優しくパンパンと顔をたたき、いろんな角度で鏡を見る姿に思わず笑ってしまう。
成長したな!と思うこの1年。「ママはどんな病気だったの?」「がんという病気」「どんながん?」「乳がんという病気だよ」。最近、こういった場面が多くなってきました。知りたいことがいっぱいあると思う。息子が小さい頃は、どう伝えていけばいいのかと悩んだこともありました。でも、そんな心配は必要なかった。息子なりにしっかり理解しようとしている。
「乳がんは女性に多いがんで、9人に1人って言われているんだよ」「そんなに多いんだ。みんな治らないの?」「ううん、そうじゃないよ」「じゃ、どうして?」。年齢とともに理解の幅も変わっていくだろう。今、感じたことが「違ったな」と思うこともあるだろうし、悲しくなってしまったり、悔しくなったり、誇らしく感じたりすることもあると思う。母親が隣にいない息子の「なぜ?」に、その時、その時の言葉で何度でも全部、答えてあげたい。
感情に振り回される、それでいい
前回の子育て日記を読んでくださった、ご主人を白血病で2年前に亡くされた方からメッセージをいただいた。「周りからの声に苦しくなる時があります。気にしないようにしても現実は容赦なくて。強がってしまう自分が悔しい」。僕もそう、自分でわかってはいるんです。でも。
喜び、希望、葛藤、不安、後悔、悩み。どれも人と比べられるものではなく、その時の感情に振り回されてしまうこともある。そんな自分がイヤになることもあるけれど、それでいいんだと思う。いつかきっと、もっと深く自分の感情と向きあえる時がくる。その時まで、そんな自分を認めてあげられる自分でいたいと僕自身に言い聞かせる。
息子は9歳。2024年、僕たちにママがいなくなって9年になります。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。
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