シングルファーザーの先輩に「うらやましい」と言われて〈清水健さんの子育て日記〉60
いつかは僕はひとりになる?
いつかは僕はひとりになる? 息子の成長している姿に、そう感じる瞬間がある。
新年度、何かとバタバタするものだけど、息子の前ではそんな姿は見せたくない! 疲れていないふうを装って家に帰り、一緒にご飯を食べ、お風呂に入る。それなのに寝る時、いつもはどちらかというと寝心地の良い方の枕で寝ている息子が「僕は今日、こっちの枕で寝るから、僕の枕で寝ていいよ!」って。わかるんだろうな。息子に気を使わせてはいけない! 気持ちを引き締める4月です。
間違いなくうれしい。でも、寂しい。どっちも本音なんだろうなと思う。
「はなちゃんのみそ汁」の著者、安武信吾さん。1年に何回も会うわけではないけれど、定期的に「会えますか?」と連絡をくれる。妻を同じく乳がんで亡くしたシングルファーザーの先輩で、娘さんは4月から大学4年生。就職活動も始まっているとのこと。
毎日、自分の将来を考え忙しくする娘さんをみて「子育ては早かった」と思うそうです。「わからんやろ?」って僕に聞く(笑)。わからない。僕は今に必死。4月からの息子の習い事のスケジュール、送り迎えはどうするか。もちろん自分の仕事もある。悩む僕を、安武さんは「うらやましい」とも。
まだ息子には言わない言葉
「お母さんだったら何て言うと思う?」が安武さん親子の人生における大事な場面での合言葉。僕はまだその言葉を息子には言わない。でも、同じように「妻だったらどうするだろう?」と考えて息子に接するようにしている。妻がいてくれたらなんて考えても仕方がない。でもね、しんどいよ、ほんと、しんどいなと思う時がある。
自分に言い訳していないか。4月から毎週3時間の生放送のラジオのパーソナリティーの仕事もはじまる。初めてのラジオでの仕事。考えることも増える。その中で、息子との会話に心がこもっていないことはないか。
「妻がいなくなって16年、人生、娘のために生きてきた」。そう話す安武さんを本当にカッコいいと思う。子育てに一区切りつこうとしている先輩の顔は充実と寂しさと、奥さまへの愛にあふれていた。僕もこうありたい。
先日、少年野球の体験に行った息子は、初めて僕以外とキャッチボール、バッティング。汗をかき、興奮で顔を赤くし、「楽しかった!」。その言葉はたまらなくうれしい。心も体も成長している。いつか僕もひとりになる? ならないよ、ずっと息子たちはいてくれる。でも、「聞いてよ、今日ね!」って言える人が隣にはいない。
清水健(しみず・けん)
フリーアナウンサー。9歳の長男誕生後に妻を乳がんで亡くし、シングルファーザーに。
コメント