「虐待と言ったら馬乗り」小4女児虐待死の初公判、母に懲役2年求刑 父のDV明らかに

山口登史 (2019年5月17日付 東京新聞朝刊)
 千葉県野田市の小学四年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が1月に自宅浴室で死亡した虐待事件で、父親の勇一郎被告(41)=傷害致死罪などで起訴=の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母親なぎさ被告(32)の初公判が16日、千葉地裁であった。なぎさ被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。検察側は懲役2年を求刑し、即日結審した。判決は6月26日。

 止めようとしたら、床に押しつけられ…

 なぎさ被告は被告人質問で、昨年末から今年初めにかけての勇一郎被告による心愛さんへの暴行を、なぎさ被告が「虐待だよ」と制止しようとしたところ、「胸ぐらをつかまれ、床に押しつけられて馬乗りになられ、膝掛けを口の中に突っ込まれた」と説明。勇一郎被告からのドメスティックバイオレンス(DV)を受けたと証言した。

 この日の法廷では、沖縄県糸満市から野田市に転居した2017年、一時的になぎさ被告と離れて暮らしていた心愛さんが、当時の状況を「毎日地獄だった。夜中にずっと立たされたり、妹の世話をさせられたりした」と打ち明けていたとする、なぎさ被告の供述調書も読み上げられた。

浴室に立たせたきっかけは「年越しそば」

 また、昨年の大みそかに家族で年越しそばを食べている時に勇一郎被告が「もっとおいしそうに食べられないのか」と心愛さんを浴室に立たせるようになり、死亡する今年1月24日まで虐待がエスカレートしていく状況も、なぎさ被告の供述調書をもとに、検察側が指摘した。

 

 検察側は冒頭陳述で、勇一郎被告は遅くとも17年7月ごろから心愛さんを、夜中に長時間立たせたり、床に正座させたりするなどの虐待を行うようになり、なぎさ被告は、同年9月以降には虐待を認識していたと指摘。論告では「勇一郎被告が好きだという気持ちもあり、虐待を容認していた。心愛さんを守ろうとする態度がみられず、母としての責任を放棄して虐待に同調した悪質な犯行」と述べた。

弁護側「夫の支配下にあった」執行猶予求める

 一方、弁護側は「野田市に転居してからはなぎさ被告が夫(勇一郎被告)の意向を無視して自分の行動を決めることができず、夫の支配下にあった」と述べ、執行猶予付きの判決を求めた。

 起訴状によると、1月22日午後10時ごろから同24日午後9時50分ごろ、心愛さんに食事や睡眠を与えず居間や浴室に立たせ続け長時間放置したり、浴室で冷水シャワーを浴びせたりした勇一郎被告の暴行を、なぎさ被告は制止せずに、食事を与えないなど暴行の手助けをしたとされる。勇一郎被告の公判期日は未定。

被告人質問の主なやりとり

 【弁護側】

 -勇一郎被告からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたと思うか。

 「当初は思っていなかったが、振り返ってみるとDVだったのかな」

 -年末年始の暴行を止めたことはあるか。

 「『これ以上やらないで』『通報する』と言ったが、胸ぐらをつかまれ、床に押し倒されて、馬乗りになってきて、苦しいと言うと、ひざ掛けを口の中に突っ込まれた」

 -心愛さんと出て行こうと思わなかったのか。

 「行き先がばれて、連れ戻されると思った」

 -心愛さんはどんな子だったか。

 「優しくて、いつも笑顔で明るい子だった」

 -千葉に来てからは。

 「正直、あまり元気そうには見えなかった。暗い感じに見えた」

 -心愛さんに今思っていることは。

 「…(答えず)」

 【検察側】

 -虐待に対し、どうすればよかったと思うか。

 「警察に通報するか、児童相談所や家族に相談していれば良かった」

 -自分が止めようとは思わなかったか。

 「はい」

 -心愛さんの気持ちは考えなかったのか。

 「考えたが、旦那に怒られると思った」

 -心愛さんは助けてほしかったと思わないのか。

 「思います」

 -心愛さんに今言いたいことは。

 「…(答えず)」

 【裁判官】

 -心愛さんに最後にしてあげた母親らしいことは。

 「…(答えず)」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年5月17日