忙しすぎる柏児童相談所…児童福祉司1人が平均43人を担当 野田市の小4虐待

太田理英子、山口登史 (2019年2月15日付 東京新聞朝刊)
 千葉県野田市の小学4年栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡した事件で、父親の勇一郎容疑者(41)が14日、心愛さんへの別の傷害容疑で県警に再逮捕された。虐待の恐れを認識しながら、心愛さんを自宅に戻す決定をするなど、リスクを放置した県柏児童相談所の責任が改めて浮き彫りになった。一方、全国の児相が対応する相談や通告は増え続けており、専門家は「業務が児相に集約されすぎている」と指摘する。

心愛さんの帰宅後の様子 担当職員が多忙で確認遅れる

 「虐待の再発はないと考えた。担当職員に緊急の対応などがあり、帰宅後の確認が遅れた」。今月5日、千葉県庁での記者会見で柏児相の二瓶一嗣(にへいひとし)所長はそう繰り返した。

 心愛さんが学校アンケートで父親からの暴力被害を訴え、柏児相が一時保護したのは2017年11月。児相は翌12月末、父方の親族宅での滞在などを条件に保護を解除し、18年2月末には、虐待を否定する勇一郎容疑者の要求に押し切られる形で、自宅に戻す決定をしていた。

 認定NPO法人チャイルドファーストジャパンの山田不二子理事長は「虐待を認めず、母親へのドメスティックバイオレンス(DV)も疑われる中、父親の元に帰すのは極めて危険だった」と批判する。

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全国の相談・通告への対応は13万件 27年連続で最多を更新

 住民や学校などから虐待通告があった場合、児相は48時間以内に児童の安全を確認し、緊急度が高い場合は一時保護。施設や里親に預けるか、親元に戻すかを調査する。

 17年度、全国の児相が虐待の相談・通告に対応したケースは約13万件に上り、27年連続で過去最多を更新。7カ所の児相がある千葉県は計約7900件で、都道府県別では5番目に多かった。

専門家の声「警察に機能を分け、支援に専念できる体制を」

 県などによると、県北西部の5市を管轄する柏児相では、子どもの相談や支援を担う児童福祉司の1人当たりの平均担当ケースは43.6人(17年度)。県内で児童福祉に携わる50代の男性は「職員一人一人が忙しすぎ、手が回らないのが現状」と語る。

 花園大の和田一郎准教授(子ども家庭福祉論)は「少なくとも通告の受け付けは警察に機能を分離するなど、児相が支援業務に専念できる体制を整える必要がある」と話す。

 政府は、22年度までに児童福祉司を2020人程度増やす計画を前倒しする方針だが、単に人を増やすだけなく、人材育成と体制の整備が急務だ。

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