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心愛さんへの思いは語らなかった母 虐待激化に「助けてほしかったと思う」

太田理英子、黒籔香織 (2019年5月17日付 東京新聞朝刊)
 「優しくて、いつも笑顔で明るい子でした」。千葉県野田市の小学四年栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=虐待死事件で、傷害ほう助罪に問われた母親なぎさ被告(32)の初公判。家庭内でエスカレートしていった父親勇一郎被告(41)による暴行の様子が浮かび上がった。終始か細い声で答えていたなぎさ被告は、心愛さんがどんな子だったか聞かれると、体を震わせて涙をこぼした。だが、今の心愛さんへの思いを尋ねられると口を閉ざした。 
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小4女児虐待死事件の母親の初公判で、傍聴券を求めて並ぶ人たちの列=16日午前、千葉地裁前で

「娘の気持ちは考えたが、旦那に怒られると思った」

 黒縁眼鏡、茶色の長袖ニットに黒いズボン姿のなぎさ被告は、背中を丸め、弱々しい足取りで入廷。罪状認否では、起訴内容を認めるか裁判長に問われると、数十秒沈黙した後、「間違いありません」と小さな声で答えた。

 「心愛の気持ちは考えたが、旦那に怒られると思った」。被告人質問で、なぎさ被告は、夫による心愛さんへの虐待が次第にエスカレートしていく中、夫の指示に従い、暴行を止めなかった理由をこう述べた。心愛さんを連れて逃げなかった理由を聞かれ、「連れ戻されると思った。(戻されたら)昔と同じように見張られるようになると…」と消え入るような声で答えた。

 検察官から「心愛さんはあなたに助けてほしかったと思うか」と問われると「思います」。だが、現在の心愛さんへの思いを何度も問われても、身動きすることなく黙り込んだ。

食事抜き、浴室に立たせる…激化していった虐待

 公判の証拠調べでは、なぎさ被告の供述調書が読み上げられた。

 昨年12月31日に家族で年越しそばを食べていると、勇一郎被告が心愛さんに「もっとおいしそうに食べられないのか」と言い、浴室で立たせた。

 今年1月1日、心愛さんはスクワットを何回もさせられ、倒れ込んだ。勇一郎被告は両腕をつかんで床に打ち付けた。

 亡くなる数日前から食事を抜いたり、浴室に立たせたりして虐待は激化していった。1月23日、勇一郎被告は外出する際「風呂場で駆け足してろ」と命令。帰宅すると「駆け足の音が聞こえない」と、夕食を食べさせず、翌朝まで浴室で立たせた。

LINEで「勝手に冷蔵庫…ムカつく」夫に告げ口も

 24日夜、シャワーをかけられぬれ、肌着だけを着ていた心愛さんは「寒い、寒い」と両手を伸ばしてストーブに当たっていた。なぎさ被告が寝室に入れようとすると、勇一郎被告が「だめだからな」と浴室に連れて行き、「ドン」という音が2回響いた後、勇一郎被告が冷静に「心愛が動かない」と戻ってきた。なぎさ被告が心臓マッサージをしたが反応はなく、心愛さんは死亡した。

 検察側の証拠調べでは、なぎさ被告が勇一郎被告にLINEで心愛さんの行動を伝えるやりとりも明らかになった。今年1月、勇一郎被告に「私が寝ているのをみはからって勝手に冷蔵庫を開けて飲み物を飲もうとしていた。(心愛さんに対し)おまえは何様か、ムカつくね」というメッセージを送っていた。

NPO法人全国女性シェルターネットの北仲千里共同代表の話

 被告は支配的な夫からのドメスティックバイオレンス(DV)により自らの感情を切り離して思考も停止し、娘への虐待を人ごとのようにしか考えられなくなっていたのではないか。暴力から逃れるため、その時々をやり過ごそうとするのはDV被害者に多く見られる精神状態だが、司法の場ではなかなか理解されていない。虐待を受けている子を守るためには、DVの被害に遭っている親への支援も必要だ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年5月17日