子どもの虐待死をなくしたい…あなたもすぐにできる「3つのこと」

 千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(当時10歳)、東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が、いずれも父親から暴力を受けて亡くなった事件に、多くの人たちが心を痛めています。「小さな命を守るために私は何ができるのだろう」-。東京都足立区で子育て中の会社員、隅田繭子さん(36)も、東京新聞にそんな投稿を寄せてくれました。国や自治体では、虐待防止策や法整備などが話し合われていますが、私たちが日々の生活の中で今すぐできることは? 専門家に聞きました。

「小さな命を守りたい」…日々の生活でできることは?

〈投稿の内容〉
 育休中に、結愛ちゃんと心愛ちゃんが親の虐待を受けて死亡する事件をニュースで知った。2人ともどんなに怖かったか。どんなに助けてほしかったか。小さな命を守るため私に何ができるのか、考え続けている。
 私以外にも、たくさんの人がいま「子どもを守りたい」と考えているはずだ。一市民にできる具体的なことを教えてほしい。
 (東京新聞2019年2月21日朝刊「発言」欄に掲載)

子どもの手をとる親

 隅田さんの声を受けて、東京すくすくの「ストップ 子ども虐待」特集にも登場していただいた認定NPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」理事の高祖常子(こうそ・ときこ)さんに、「虐待をなくすためにすぐにできる3つのこと」を教えてもらいました。

①街中で困っている親子に優しいまなざしを向ける

 電車やバスの中で泣く子をあやしたり、ベビーカーで階段を上がれず右往左往したり…。公共の場で困った状況にある時、ちらっと見られただけでも「責められているような気がする」という親の声はよく聞きます。

 「泣きやませられないのは自分のせいだ」とか、「外に出ない方がいいのだろうか」などと、無力感や孤立感を深めれば、ストレスがたまります。たたいたり、暴言をはいたりする虐待は、親のストレスが大きくなった時に起こりがちです。

 困っていそうな親子を見たら、「泣いちゃいますよね」「手伝いましょうか」などと声をかけてあげてほしい。ニコッとほほえみかけるだけでも、親の気持ちはぐんと楽になります。

②近所の子育て中の親子とつながる

 虐待があったり、子育てに困難を抱えていたりする家庭は、地域でのつながりがないケースが多いです。

 近所に子どもがいる家庭があれば、積極的に親や子どもにあいさつしてあげてください。自分にも年齢の近い子どもがいるなら、ぜひ一緒に遊ぶ機会をつくって、「困ったことがあったら声を掛けて」とサポートする姿勢を日ごろから伝えておくのもいいでしょう。

③「虐待かな?」と思ったら児童相談所全国共通ダイヤル「189」(いちはやく)に電話を

 気になる家庭があっても、追い詰めてしまうのでは、と通報にはためらいを覚える人も少なくないと思います。でも、専門機関への情報提供は、家族が適切な支援を受けるための第一歩にもなります。結果的に虐待にまで至っていなくても、子育てに悩みや困難を抱えている親を把握することにもつながります。

 「189」にかけると、固定電話なら、最寄りの児童相談所に直接つながります。携帯電話、IP電話の場合は、オペレーターに都道府県と市区町村を伝え、管轄の児童相談所につなげてもらうことになります。

 児童相談所の担当者からは、どこで、どんな状況を見聞きしたのかについて聞かれます。通告や相談は匿名でもOK。名前を伝えたとしても、児童虐待防止法には児童相談所が「通告した人を特定させるものを漏らしてはならない」と定められており、相手に伝わることはありません。通告、相談は無料ですが、通話料はかかります。詳しくは、厚生労働省の児童相談所全国共通ダイヤルのページへ。

大切なのは「つながること、できる範囲でサポートすること」 

 相次ぐ子どもの虐待死事件を受けて、「自分にできることは何か」と考える人が増えたと高祖さんは感じています。資格を取って子育て支援の現場に入ったり、学習支援のボランティアに携わったりする人もいますが、高祖さんは「特別なことではなく、つながること、可能な範囲でサポートすることが大切」と強調します。「小さな一つ一つの言動が、親のストレスを軽減させ、結果的に虐待を減らすことができる。子どもを見守るあたたかな思いを広げていくことが大切です」と話しています。

◇高祖さんら虐待防止の専門家が体罰禁止の法整備を求めて署名を集めています。記事はこちら

<特集「ストップ 子ども虐待 わたしたちにできること」トップはこちら

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