子ども食堂立ち上げ目指す学生たちが全国ネットづくりへ さいたまで8月16日にシンポジウム
学生主体の運営事例は分からず
ネットワーク化の大切さを呼び掛けているのは、東洋大助教の関屋光泰(みつひろ)さん(45)らが今年5月から無償で始めた「子ども食堂学生ボランティアスタートアップ講座」の受講生たちだ。意欲的な若者たちが食堂の開設に向けて学んでいる。
学生らが手掛ける子ども食堂は各地に点在するものの、それぞれが蓄積している成功事例や失敗対処法といった実践知を共有するつながりのないことに気づいた。全国の子ども食堂は3700カ所を上回るとの調査結果もあるが、学生らが運営主体となっている食堂の実態ははっきりしない。
知恵を出し合える場ほしい
子どもの居場所活動に携わる学生らが知恵を出し合える場が欲しいと声を上げた1人、川口市立高校3年の佐甲かほ子さん(17)は2つの利点を挙げる。「1つは、学生らの交流を通して新しい形の居場所が生まれること。もう1つは、興味を持つ同世代が増え、活動の輪が広がること」
社会福祉に詳しい関屋さんは「子ども食堂を担う学生らにとって、食堂は地域に貢献したり、地域から学んだりする場になり、子どもにとって、年代の近い学生らは身近なロールモデル(手本)になる」と指摘。
その上で「かつての大学生らによる地域交流と生活支援の活動だった『学生セツルメント』のような幅広いネットワークは、知識や経験を共有し、活動の持続可能性を高めるという点でも意義は大きい」と語る。
低所得のシングルマザーら支える契機に
受講生たちは、全国ネットの旗揚げ時期を10月に設定。機運を高めようと、子どもの居場所づくりに取り組む芝浦工業大、立正大、創価大などのグループに参加を求め、8月16日にさいたま市内でシンポジウムを開くことを決めた。
一般社団法人「グラミン日本」(東京)の最高執行責任者である百野公裕(もものまさひろ)さんにその日の講演を依頼するという。低利・無担保融資によって貧困と闘ってきた功績が認められ、2006年にノーベル平和賞を受けたバングラデシュのグラミン銀行の日本版だ。
関屋さんと二人三脚で講座を運営する川口市内のボランティア団体「川口こども食堂」代表の佐藤匡史(まさし)さん(46)は「子ども食堂の背後には、低所得のシングルマザーらが控えている。困窮家庭をどのように支援していくかを具体的に考える契機になれば」と話す。