障害ある子も一緒に遊べる公園 世田谷、立川、渋谷…都内に続々 車いすOKの遊具も
スロープ、背もたれブランコ、地面にはクッション
車いすの子どもがゆるやかなスロープをのぼって大型遊具で遊び、体がぐらつきやすい子が背もたれの付いたブランコでゆらゆら。地面にはクッション性のあるゴムチップ舗装がされて転んでも大丈夫-。砧公園は来年4月、こんな公園に生まれ変わる。
誰もが遊べる公園づくりに取り組む団体「みーんなの公園プロジェクト」(岡山市)によると、遊具にこうした配慮がされた公園は欧米では広がりつつある。しかし、国内では国営昭和記念公園(東京都立川市、昭島市)、とだがわこどもランド(名古屋市港区)、国営明石海峡公園(兵庫県淡路市)など少数にとどまる。
国土交通省によると、2006年施行のバリアフリー新法に基づいて、園路の幅を車いすで通れるようにするなどの基準があるものの、遊具は安全性についてのガイドラインだけ。「遊具の内容は各自治体などが決めている」(担当者)のが実情だ。
「すべての子がともに遊ぶ機会を」府中の森も改修
そんな中、都は今年2月、共生社会に向けて「すべての子どもたちがともに遊び、学ぶ機会を積極的に提供する」という方針を打ち出し、本年度は砧公園のほかに府中の森公園(府中市)で改修事業を始めた。
渋谷区も6月議会で区側が積極的な導入を表明し、遊具の更新などに合わせて配慮型を整備する検討に入った。
豊島区では8月、ダウン症の子どもを持つ保護者らが、障害児に配慮した公園整備を求めて区に要望書を提出。高野之夫区長は「できるだけ要望を踏まえてやっていきたい」と応じた。提出者の井田美保さん(45)は「障害ある子もない子も一緒に楽しく生き生きと遊べる公園は、地域住民の交流にさらなる広がりを生む」と期待している。
専門家「遊具を置いておしまい、じゃない。改善が大事」
障害のある子どもらに配慮した公園事情に詳しい元特別支援学校教諭の矢藤洋子さん(名古屋市)は「当事者と対話しながら、より良いものを目指してほしい」と話す。
米国在住歴がある矢藤さんは同国内の公園に触発され、帰国後の2006年に「みーんなの公園プロジェクト」の発起人となって活動を開始。国内外の公園を訪ね、遊具の使い勝手や園内での移動のしやすさなどを調査し、ホームページで発信してきた。
配慮型の遊具を設けている公園でも、車いす用スロープの距離が長すぎて使いづらかったり、駐車場から遊具までの距離が遠かったりと、障害のある子どもが実際に遊ぶには課題がある例も少なくないという。
矢藤さんは「遊具を置いておしまいとするのではなく、遊んでみて工夫が必要なところを見つけ、改善することが大事」と指摘。「いきなり100点ではなくても、進化させれば良い。東京都がやれば大きなムーブメントになる」と話す。