医療的ケア児の親に渦巻く不安「私が感染したら…」 24時間体制のケア、誰が対応? 親の会が国に要望
衛生用品の不足や治療できなくなることも不安
要望したのは「ウイングス 医療的ケア児などのがんばる子どもと家族を支える会」。会が4月5日から19日にかけて、インターネットで不安なことや困っていることについて尋ねたアンケートには、医療的ケア児や重度障害のある子を育てる母親などから287件の回答があった。
不安を感じていることで最も多かったのは、保護者が感染した場合の子どもの預け先の確保(86.4%)。子どもが感染した場合の入院付き添いや治療の情報不足(82.6%)、消毒用エタノールやアルコールなど衛生用品の不足(75.6%)、医療崩壊により必要な治療が困難になること(73.2%)と続いた。
親戚宅や児童相談所では対応できない
同会代表の本郷朋博さん(37)によると、こうした家庭の多くは家族、特に母親が大部分のケアを担っているケースが多い。家族が感染して療養が必要になった場合、厚労省は「親戚宅に預ける」「児童相談所への相談」などの対応を挙げているが、本郷さんは「日ごろケアを担っていない人では適切に対応できない」と話す。アンケートにも「親である私たちが陽性だった場合、医療ケアのできる人は夫婦以外にいないので居場所はどうなってしまうのか、とても不安」「自宅では隔離が難しいのとケアできるのが私しかおらず子どもと濃厚接触になってしまう」などという声が寄せられた。
また、感染拡大でいつも利用しているリハビリ施設や保育所、短期入所施設などが使えなくなっていることで、社会とのつながりが閉ざされ、親だけで日々のケアを抱えることとなり、休息も十分に取れなくなっているとの声も出ている。
子どもがすぐに検査・入院できるように
アンケート結果を基に、同会は「東京都医療的ケア児者親の会」の協力を得て、家族の感染が疑われた場合、リスクの高い医療的ケア児や重度障害児が速やかに検査を受けて、入院できるよう国が都道府県に働きかけることを要望。短期入所を受け入れる施設への補助金支給なども検討するよう求めた。
通所施設などの利用ができない今、訪問看護や訪問介護が命綱となっている家庭も多いため、利用日数や時間などの規制を緩めることも要望。もし主にケアを担う家族が感染した場合、子どもの医療や福祉に関する手続きを家族に代わり相談支援事業所などが関わって進められるよう自治体に通知することも求めている。
ウイングスは2017年3月から活動を開始した団体。本郷さんは小学生の甥が医療的ケア児で、会の運営にかかわる。新型コロナの感染拡大後は、会のメンバー約180人が入っているLINEグループで、困りごとがあれば声を上げるよう伝えたり、個別に相談に乗ったりしている。「外に出にくい状況の中、預け先もなく子どもの介護を抱え込みストレスを高めている親が多い。厳しい現状を広く知ってもらい、国や自治体にもできることから対応してほしい」と訴えている。