男女で目を合わせてはダメ、入浴は10分…「刑務所みたい」な一時保護所を変えたい 職員や保護経験者が勉強会

浅野有紀 ( 2020年11月16日付 東京新聞朝刊)

昨年秋の勉強会で若手職員らと一時保護所の環境改善に向けた課題などを話し合う藤田琴子さん(左)=東京都新宿区で

 虐待などで親元にいられない子どもらが身を寄せる一時保護所の環境改善を目指し、関東地方の若手職員らが「いちほの会」を立ち上げ、交流や勉強会を重ねている。保護所によってはトラブル回避のため私語や私服禁止など厳しいルールがあり、子どもを傷つけているのではと現場は葛藤を抱えてきた。 

厳しいルールに葛藤、人権守る場目指す

 立ち上げたのは、東京都内の母子生活支援施設で働く社会福祉士の藤田琴子さん(28)。3年前、一時保護所に入った経験がある女子高生に再び保護してもらうことを提案すると、「死んでもいや。刑務所みたいで大人が信じられなくなったから」と拒まれた。「子どもを守るための場所なのに」とショックを受けた。

 安心な場にするため自分にできることはないかと、児童福祉に関わる知人に声を掛け、昨年5月に会を発足。職員をはじめ里親や弁護士、一時保護を経験した若者ら30人ほどが、対面やオンラインで情報共有している。

下着も「お仕着せ」、食事中の私語禁止

 挙げられた生活ルールには「男女で目を合わせてはいけない」「食事中は会話禁止」などがあった。私服を「なくさないため」として入所時に預かり、施設が用意した服や下着を着せるところも。

 ある男性職員は、男女で目を合わせてはいけない規則について「退所後の交際トラブルを避けるためで、理解はできるが、傷ついた子どもに寄り添えているのか葛藤がある」と漏らす。

 一方で「子ども同士が会話を楽しみながら食事している」という報告もあり、聞いた職員は「同僚に話して意識を変えていきたい」と明るい表情を見せた。

 いちほの会は集まった声や、一時保護所を子どもの人権を守る場にするため職員に求めたいことを冊子にまとめた。東京23区のうち、一時保護の必要性を判断する児童相談所の新規開設を準備中の自治体に配り、11月中に設けるホームページでも公開予定だ。

職員不足で管理的に、外部の目が届かず

 なぜ、厳しい生活ルールを課す一時保護所があるのか。明星大の川松亮(あきら)教授(児童福祉論)は、職員数に対して子どもの人数が多いことから「どうしても管理的になる」と指摘。虐待だけでなく、非行を理由に保護される子もいるため「非行の子に合わせて、厳しいルールが伝統的に続いている面もある」という。

 厚生労働省は今年3月に出した運営ガイドラインの最新版で「子どもの権利が尊重され、安心して生活できるような体制を保つよう留意する」と記述したが、細かい生活ルールまでは定めていない。

 いちほの会に参加した現役職員によると、ルールを改善するかは一時保護課長など責任者の方針による。職員同士で話し合いたくても「人員不足で子どもの世話に追われ、時間が取れない」と話す。

 外部の目が届きにくいこともある。児童養護施設などは3年に1回以上、第三者評価を受けることが義務付けられているが、一時保護所は任意。厚労省によると、昨年4月時点で外部評価を取り入れているのは24%だった。

 厚生労働省は9月に、一時保護の手続きなどについての有識者検討会を設置した。生活ルールについても議論される見通しだ。

一時保護所とは

 虐待や非行などで家庭から保護する必要があると児童相談所に判断された子どもが、次の行き先が決まるまでを過ごす。一時保護の期間は原則2カ月まで。入所中に児相が家庭環境などを調べ、自宅に帰せないと判断した場合は児童養護施設や里親家庭に委託する。各都道府県に最低1カ所、全国に144カ所(7月時点)ある。

一時保護所の生活規則の例
  •  男女で目を合わせてはいけない 
  •  私物の持ち込み禁止 
  •  食事中の私語禁止 
  •  学校に通えない 
  •  紙や鉛筆を自由に使えない 
  •  入浴は10分以内 
  •  トイレに行く時は職員の許可を得る

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年11月16日