眠れない…過酷な双子・多胎育児 7割超が「睡眠は4時間未満」NPO調査で判明「寝たと思ったらどちらかが起きる」
【関連記事】双子の母が涙の告白「子をあやめるか自殺か…」過酷な多胎児育児
超党派ママパパ議連が「多胎ママパパ1000人会議」
調査は、今年1月2~20日に、インターネットで実施。結果は、国会議員による「超党派ママパパ議員連盟」(会長・野田聖子自民党幹事長代行)が3月10日に国会内で開いた会合「多胎ママパパ1000人会議!」で公表された。会合には、国会議員や厚生労働省の担当者ら30人が会場に集まったほか、オンラインでも国会議員や地方議員、多胎育児支援の関係者など44人が参加し、課題を共有した。
最も過酷だと感じた育児期間の睡眠時間を尋ねた設問では「3時間」が最も多く、慢性的な睡眠不足になっている親の実態が明らかになった。
回答結果のポイント
・「睡眠時間は理想の半分以下だった」との回答が75%以上
・ 4時間未満だったとの回答が70%以上
主な自由記述 「イライラ」「鬱」が多数
「どちらかが寝たと思ったらどちらかが起きて、自分の寝る時間がない」
「まず上の子が疎ましくなった。大人の手がどうしたって足りない中、抱っこなどをせがまれるとイライラする」
「常に2人の新生児が死んでしまわないか、と気の休まるときがない」
※「睡眠不足」「寝不足」「休まる時間がない」といった趣旨を含むものは154件、身体的・精神的負担から「イライラする」「鬱(うつ)」といった言葉が含まれる回答も181件あったという。
「育児サービスを使うのは申し訳ない」意識がある
調査結果を説明した「つなげる」の代表理事で、自らも10歳の双子を育てている中原美智子さんは「(多胎児の子育て支援)活動を進めるなかで特に重大だと感じているのが『睡眠不足』と『地域資源がうまく活用されていないこと』の2つ」と指摘。その上で、「『わたしの寝る時間をつくるために、お金を払って育児サービスを使うのは申し訳ない』というママがいるが、そういった意識をママ自身や周りにいるパパ、家族からも取り除かなければ、課題はクリアできない」と話した。当事者のママたちには「寝る時間を確保するために育児サービスを使うことはとても大切なこと。子どもたちにとっても、とてもよいことだと伝えたい」と呼びかけた。
アンケートでは育児サービスの利用を検討する際に気になることも複数回答で尋ねた。最も多かったのは「利用料金が高い」で「利用予約が柔軟にできない」「24時間365日対応ではない」が続いた。
回答結果のポイント
・金銭面、利用時間への回答が多かったが、「多胎育児を知らないスタッフ」という回答も400件近くあった。
・「どんなサービスがあると利用したいか」との問いに対し、575件の自由記述回答が集まった。「双子割引などの行政サービス」「予防接種や健診など、外出の付き添いサービス」「多胎育児経験者が家に来てくれたら安心できる」など。
主な自由記述 「サポートが実際には使えない」
「身近に親族やサポートする人もおらず、夫も帰りが遅く、毎日ワンオペ。初めての育児が双子で最初の頃は夜間授乳もあり、寝不足で体力はボロボロに。なので保健師訪問の際に紹介された地域のファミサポに登録にいったところ(その日も双子連れでバスには乗れず夫に有休をとってもらった)、双子を見られるボランティアさんはいないと言われ、区役所に相談しても、部署をたらい回しにされるだけで助けてもらえず、産後鬱状態になった」
「産後の保健師訪問はあったが、実際には空きが全然なく使えない一時保育や、双子を見られる人がいないファミサポ、区役所の電話番号を紹介され、本当に困っても実際には使えないものばかりで途方に暮れた」
また、多胎育児を支援するサークルなどが各地にできているが、最も過酷な乳児期の子育てが終わると、参加する頻度が減る傾向に。そのため、サークルの運営に継続的に関わる当事者のママパパが少なく、せっかく蓄積された地域での活動が伝承されていかないという課題もあるという。中原さんは「多胎支援の活動自体が社会から広く認められる必要がある」と訴えた。
虐待相談件数は単胎児の5倍 母親の健康状態悪化でリスクが高まる
そもそも低体重でケアに負担 専門的な支援が必要です
ママパパ議連の会合にオンライン参加した大阪市立大大学院看護学研究科の横山美江教授によると、児童虐待相談に対応した約1万8000人の幼児のデータを分析した調査で、相談件数は多胎児のほうが単胎児に比べて5倍多かった。多胎児であることだけが虐待の要因になるわけではないが、「母親の健康状態の悪化」「育児相談者がいない場合」「低出生体重児がいる場合」には、虐待のリスクが高まることが分かっているという。
多胎児家庭ではおよそ7割の子どもが低出生体重児として生まれる。横山教授によると、低出生体重児は、母乳やミルクを飲む力も弱く、授乳に時間がかかるなど、お世話の負担は一層大きくなる。負担の大きさから、母親は極度の睡眠不足に陥り、重度の疲労で健康状態を悪化させるケースが多いという。横山教授は「母親の健康状況を極度に悪化させないため、多胎育児の専門的知識を持った保健師などの専門職による支援や、当事者同士のピアサポートの活動を支援することが大切。育児相談者がいることも虐待リスクを低減させるという点からも予防効果が期待できる」と話す。
ただ、出産後は日々の育児に追われ、相談や活動につながる手続きに出向くことすら難しい状況になる親がほとんどだ。横山教授は「多胎児を妊娠した母親には、母子手帳を2冊渡しており、妊娠時点で多胎児家庭は把握できる。自治体は、妊娠中から多胎児の母親に予防という観点で積極的につながることが重要だ」と指摘。「出産前の時点で使える行政サービスへの登録を促したり、民間の支援団体につなげたりすれば、出産後、円滑にサービスや支援を受けられる」と提案する。
双子を育てた蓮舫さん 「寝たかった」しか覚えてません
会合では、双子の親である立憲民主党代表の枝野幸男さん、同党副代表の蓮舫さん、公明党の高瀬弘美さん、自民党の中曽根康隆さん、自身が双子の同党の黒岩宇洋さんらが当事者ならではのエピソードを披露した。
蓮舫さんは現在23歳の長男と長女が生まれたばかりの時期を振り返り「きつかったことは、寝られなかったこと。育児はミルクをやったり、おしめを替えたり24時間ずっとやる。寝たかったことしか覚えていません」と話した。当時は双子用バギーが10キロを超え、散歩に出るのも一苦労。「一度、たたいたら泣きやんだことがあった。クセになりそうで、自分が本当に怖くなりました」と赤裸々に語った。その上で「今、娘と息子から私は、幸せしかもらっていません。最新ファッションやICT技術、携帯電話の使い方を教えてもらっています。育児は楽しいという思いをみなさんと共有したい」と呼びかけた。
昨年双子を出産したばかりの高瀬さんは取材に「想像していた以上に双子の育児は大変。両親など気軽に頼める人がいない家庭にとっては負担が相当大きい。多胎児家庭に対する行政の支援メニューが当事者にきちんと行き渡るような環境の整備や、ベビーシッターや家事代行サービス利用などに対する財政的支援の充実が必要だ」と話した。
コメント