社会的養護施設の深刻な人材不足 NPO「チャイボラ」がクラウドファンディング 採用情報サイトの全国版拡充へ

青木孝行 (2021年12月2日付 東京新聞朝刊)

「施設職員が増えれば、子どもの生活の質が上がる」と話す大山遥さん(右)と中塚翔大さん=豊島区で

 児童養護施設など「社会的養護」の施設の人材の確保と定着を支援するNPO法人「チャイボラ」(東京都豊島区)が、運営する採用情報サイト「チャボナビ」を全国版に拡充するため、インターネットで資金を募るクラウドファンディングをしている。代表理事の大山遥さん(36)によると、社会的養護に関わる人材の不足は深刻で「一刻も早く解決したい」という。

施設の雰囲気や暮らしぶりもわかる

 2年半前に始めたチャボナビは、社会的養護の求人情報に特化しているのが特徴だ。各施設の就職説明会や見学会の日時などの情報を一覧で紹介。施設の便りも掲載していて「プチ運動会を開催しました」「インスタグラム開設しました」などとあり、施設の雰囲気や暮らしぶりも知れる。

 「職場の実情や採用情報が学生たちに伝わりにくく、人材確保につながってこなかった」と大山さん。チャイボラ職員が施設に掲載を呼び掛けるなどして対象を増やし、現在は17都道府県の児童養護施設や乳児院、自立援助ホームなど93件を紹介している。

施設情報を一覧で紹介するウェブサイト「チャボナビ」の画面

 大山さんは大学卒業後、就職した教育事業会社の仕事を通じて、児童養護施設の職員不足を知り、すぐに退職。32歳の時、保育士の資格を取り、児童養護施設の非常勤職員となった。現場で人材不足を改めて実感し、2018年6月にチャイボラを設立した。チャイボラでは大学や短大、専門学校を訪れ、保育士や資格取得を目指す学生に、社会的養護の仕事に関する出前授業をしてきた。ただ、施設に対する学生らの印象は「暗い」「怖い」「大変そう」といった漠然としたものだったという。

 広く実情を知ってもらい、就職につなげようと作ったのがチャボナビだ。クラウドファンディングの目標額は1千万円。全国の施設を紹介する活動費に充て、サイトには地域の特色も盛り込むつもりだ。大山さんは今も週2回は施設で働きながら、チャイボラの活動を通じてやりがいを伝えている。「子どもが成長していく過程を全身で感じられる」

 支援はクラウドファンディングサイト「READYFOR」で12月25日まで受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年12月2日