児童養護施設などの入所決定時は、子どもの意見聴取を 児相への義務付け、厚労省が法改正検討

五十住和樹 (2021年9月23日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 虐待などで親と暮らせない子どもを施設や里親家庭に預けることを決める際、児童相談所が子ども本人から意見を聴くよう法律で義務付けることを厚生労働省が検討している。同省の昨年度の調査では、子どもの意見を聴いて意向を反映する手続きを設けている児相は全体の約6割にとどまった。子どもの「意見表明権」を保障し、行政の決定や支援を進めるのが狙いだ。 
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東京都が児童養護施設などの入所時に子どもに渡している「子供の権利ノート」。小学生用と中高生用があり、13項目の権利を説明している

意見聴取・意向反映している児相は6割

 主に10代後半の子どもを短期間受け入れるシェルター(定員男女6人)を運営する認定NPO法人「子どもセンターてんぽ」(横浜市)。入所前の面接では、子ども本人に利用意思の確認書類に必ずサインをしてもらうという。副理事長で弁護士の高橋温(あつし)さん(54)は「自分の人生の責任を負えるのは自分だけ。本人に決めてほしい」と話す。

 親の意向に反して入所を希望する子どもも多い。児相の行政処分である一時保護は親権者の意思に反してもできるが、「民間施設だから本人の意向、自己決定が大前提」と高橋さん。年間12、3人の利用があるが、入所する子どもには弁護士2人を付け、親との交渉などで本人の意向を代弁する。「職員が子どもに丁寧に説明し、何度も話し合うことが意見表明の尊重には不可欠」と指摘する。

 子どもの意見聴取の義務化は、厚労省の「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」が5月にまとめた報告書に明記された。同省はこれを受け、児童福祉法の改正を検討している。

 ワーキングチームが児相の一時保護所などで聞き取り調査をしたところ、「嫌だと言ったら『仕方がない』と説明された」「1日だけと言われたが5カ月もいる」「一時保護の時は誘拐されたと思った」などの声が出た。報告書では、あらかじめ意見を聴くのが難しい緊急保護の場合も、決定に不満がある子どもが保護後に意見表明できる機会を確保すべきだと提言。子どもの意見を代弁し改善を求める「意見表明支援員」(アドボケイト)を、児相などとは別の機関が担うことも求めた。

声を受け止めず、命の危険を招くことも

 子どもの意見表明権は、日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」に掲げられている。児童福祉法も「(子どもの)意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮される」と規定。子どもは単に保護される対象でなく、一人の人間として権利を持ち行使する主体という位置付けだ。

 だが、児相が保護した子どもの声を適切に受け止めず、虐待する親の元へ帰して命の危険を招いたケースもある。また、児童養護施設や里親家庭など社会的養護の現場で虐待を受ける事例も表面化。子どもの権利擁護は大きな課題となっている。

 ワーキングチームの委員で社会的養護経験者の居場所づくりに取り組む団体「CVV(Children’s Views and Voices)」副代表の中村みどりさん(38)は、高校卒業まで児童養護施設などで生活した。「家族や友人、慣れ親しんだ環境から突然引き離されるなど過酷な経験をしているからこそ、子どもの声やSOSをきちんとキャッチしないといけない」と話す。

 一時保護所などでの聞き取り調査では「自分がなぜここにいるのか、将来どうなるか分からない」との声もあり、子どもと児相や施設職員とのコミュニケーション不足が目立った。中村さんは「法律で意見聴取を義務付け、職員の意識を変えなければ。子ども一人一人の特性に合わせて話を聴くスキルを高めることも必要だ」と指摘する。

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