児童養護施設出身のモデル田中麗華さん「夢をあきらめないで」 社会的養護サイト「たすけあい」開設

浅野有紀 (2020年6月8日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

 児童養護施設を18歳で退所して5年。同じような境遇の人の中には、頼れる大人がおらず、夢を諦める人も少なくないと知った。現状を伝えることで、手を差し伸べられる社会へ変えていけたら-。さいたま市の田中麗華さん(24)は、そんな思いを込めて4月下旬、社会的養護専門ウェブメディア「たすけあい」を立ち上げた。

「思いがぶれないように、日記に書き留めている」と話す田中さん=さいたま市内で

母親が家を出て…小2で入所し「自分は人と違う」

 田中さんが施設に入所したのは、小学2年生のとき。激しい夫婦げんかが絶えず、母親が家を出た。経済的な理由から、兄姉3人とも施設に保護された。母親の元に帰りたいと泣く日もあったが、6年生の頃には無理だと悟った。施設でのにぎやかな生活も楽しかった。

 「自分は人と違う」と初めて感じたのは、退所後に保育士の資格を取るため短大へ入学してから。生活費のためアルバイトを掛け持ちし、友人から遊びに誘われても行く余裕がない。「どうしてこんなに必死にならないといけないの」。次第に一人でいることが多くなった。

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「たすけあい」の記事

施設出身を公言 ミス・ユニバース県大会で準V

 さえない毎日をなんとかしたくて、心の奥にしまい込んでいた「モデルになりたい」という夢と向き合い事務所に所属したが、うまくいかない。心配した母の援助もあり、コーチングを半年間受けてみた。

 「施設出身? すごく特別な経験じゃない」。肯定され、はっとした。施設出身と公言して出場した2018年のミス・ユニバース県大会で準優勝。ファッションショーにも出演し、モデルへの道は区切りを付けた。

 NPO法人の広報を務めながら施設出身者として取材も受けるようになり、講演活動を始めた。他の施設出身者と出会うことも増え、金銭的理由で進学を諦める子や、会社でのトラブルを誰にも相談できないまま辞めてしまう人もいると知った。

「知らないって罪」接点ない人に伝わるメディアを

 周りの支えがもっとあったら、生きづらさはだいぶ軽減されていたはずなのに、講演先では「施設出身はだめだ」と偏見を持つ学校の先生もいた。

 「知らないって罪。社会的養護とつながりがない人にも伝わるメディアをつくりたい」。新型コロナで外出自粛中、これまでに書きためた日記を読み返し、ウェブメディア「たすけあい」を立ち上げる決心がついた。リポーターとなって「児童養護施設ってどんなところ?」「里親訪問記」など、話し言葉で親しみやすく伝える。

 施設への寄付のマッチング支援や、社会的養護に関して声を上げてきた人を掘り起こす記事など、アイデアが止まらない。YouTubeでの動画配信も始めた。「生い立ちに関係なく、自分の気持ちに正直になってほしい」。一人で社会に飛び出す彼らと、応援したい人とを笑顔でつないでいく。

田中麗華(たなか・れいか)

 東京都出身。世田谷区の児童養護施設で10年間暮らす。施設退所者へ家具や家電を寄贈する東京都のNPO法人「プラネットカナール」広報。昨年9月、東京都里親制度のPR動画に出演した。「いつか困った時に声を掛けてもらえる存在であるように」と、LINEで施設を出た若者とつながる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年6月8日

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