児童養護施設を巣立った若者のための宿泊施設、江東区にオープン 葬儀業を営む84歳男性が「社会に恩返し」
井上幸一 (2022年1月7日付 東京新聞朝刊)
児童養護施設を18歳になり巣立った若者が暮らせる宿泊施設「三愛ホームアカデミー」が今月、江東区森下3にオープンする。区出身、在住で区内を拠点とする葬儀会社「三愛葬祭」を営む橋本勇さん(84)が、私財を投じて開設。苦労して一代で会社を築いた橋本さんは、「人の縁に恵まれて今がある。社会に恩返しがしたい」と語る。
ホテルを購入して改装 交流ルームも
虐待や経済的な事情で児童養護施設など社会的養護の下で育った子どもたちは、原則として施設を高校卒業を機に退所しなければならない。社会に出ても親からの援助は受けられず、経済的に自立するまで困難に直面するケースも多い。橋本さんはこうした若者の生活の拠点として、1泊2000円程度で宿泊、交流できる施設の構想を温めてきた。
宿泊施設は、鉄筋コンクリート5階建ての「ファミリーホテル ふか川」を購入して改装。いずれも3畳ほどで各8つの洋室や和室の個室のほか、ショートステイのできる大部屋、風呂、キッチン、カラオケを備えた交流ルームなどがある。宿泊者数が増えていけば、食事の提供も検討している。
免許や福祉資格の取得、サポートしたい
橋本さんは中学校を卒業すると父親の食堂で働いた。さらに学びたかったが、家庭の事情があったという。その後、台東区のボクシングジム会長、益戸克己さん(1899~1975年)と出会い、自身もジムを経営。不動産業も営み、50歳ごろから葬祭業に進出し、事業を拡大した。
宿泊施設のオープンに当たり、橋本さんは「若者が仕事を長く続けられるよう、福祉関係の資格や運転免許を取得する費用を貸し出すなど、宿泊者のサポートをしていきたい」と話す。自身の人生経験を伝える機会も設けたい考えで「人間の縁や、自分に厳しくすることの大切さを知ってほしい」と話している。
三愛ホームアカデミーへの問い合わせは、三愛企画=電話03(3643)0010=で受け付けている。