号泣しそう…児童養護施設で育った23歳の女性に「あなただけの成人式」

宮本隆康 (2021年6月9日付 東京新聞朝刊)
写真

晴れ着を着て記念撮影に応じる女性(手前)=大田区で

 生活に困窮するなどして成人式の出席をあきらめていた児童養護施設出身者のため、ボランティアで晴れ着での記念撮影を請け負っているグループが東京都大田区にある。8日、区内の古民家に23歳の女性を招き「あなただけの成人式」を開いた。 

大田区の団体 ボランティアで記念撮影

 このグループは、大田区内の女性を中心に12人のメンバーでつくる「イチゴイニシアチブ」。代表の市ケ坪さゆりさん(54)がファッション業界で働いてきた経験を生かし児童養護施設で暮らす子どもの七五三、施設出身者の成人を祝う活動を2010年から続けている。

 活動のきっかけは、2008年の秋葉原の無差別殺傷事件に衝撃を受けたことだったという。事件を受けて「疎外されて生きる人」たちのことを「社会をつくる自分たちの問題」として考えた。その中で、さまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもたちに思いを巡らせた。大田区内の児童養護施設を訪ね「喜びや楽しみをつくる」活動を始めた。

 晴れ着を用意し、仕事で知り合ったカメラマンや美容師の知人らとともに、東京都内や神奈川県内の施設へ通う。これまで、毎年30人ほどのお祝いをしてきた。

生まれて初めて…自分のためだけのお祝い

 この日は、池上本門寺の近くの古民家カフェ「蓮月(れんげつ)」が会場を提供してくれた。撮影に臨んだ23歳の女性とは知人の紹介で知り合った。女性は親の虐待が理由で5歳のとき、児童養護施設に入った。18歳で施設を出て、企業に就職。生きるのに精いっぱいで晴れ着を借りる余裕はなく、成人式に出られなかった。

写真

代表の市ケ坪さゆりさんが持つスマホを通して、知人と喜び合う女性(手前)

 美容師からメイクをしてもらい、庭園でプロのカメラマンから写真を撮ってもらった。見守る人たちから「かわいい」と声をかけられるたびに、輝く笑顔を見せた。

 女性は、子どもの時の写真がほとんどないという。施設でのお祝いは、いつもほかの子どもたちと一緒だった。「自分のためだけにいろいろな人が集まってお祝いしてくれたのは、生まれて初めてのことです。家に帰ったら号泣してしまいそう」と感激した様子で話した。

児童養護施設とは

 児童福祉法に基づき設置され、親の不在、虐待や経済的理由、病気などで、家庭で暮らすことが難しい原則18歳未満の子どもを受け入れる施設。厚生労働省によると2019年3月末現在、全国に605カ所あり、2万4908人が暮らす。子どもの平均年齢は11.5歳、在籍期間は5.2年(2018年)。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月9日

0

なるほど!

1

グッときた

0

もやもや...

0

もっと
知りたい

あなたへのおすすめ

PageTopへ