児童養護施設の職員ってどんな仕事? “親代わり”の苦労とやりがい 働く環境は改善しているが人手不足

(2022年1月7日付 東京新聞朝刊)
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児童養護施設でお絵描きする子どもを見守る職員=東京都杉並区で

 さまざまな事情で親と暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設。困難を抱えた子もいるため、親代わりを務める職員の苦労も多く、その数は慢性的に不足している。しかし、長期にわたって子どもの成長に寄り添える、やりがいのある仕事でもある。職員はどんな働き方をしているのか。東京都内の施設を訪ねた。

児童養護施設とは

 対象者は原則18歳未満で、20歳まで延長できる。厚生労働省によると、2020年3月末現在、全国に612カ所あり、入所児童数は2万4539人。乳幼児向けの乳児院は144カ所で2760人が暮らす。2019年10月1日時点の職員数はそれぞれ1万9239人、5226人。

ごはん、登園、面会交流…アフターケアも

 朝ごはんを作って子どもたちを起こし、登園・登校させる。記録など事務作業や買い出しを済ませ、子どもが帰宅したら宿題をさせ、入浴や晩ごはんを済ませて-。

 3~19歳の子ども47人が6~7人のグループ単位で暮らす東京都杉並区の児童養護施設「聖友学園」。若松弘樹施設長(50)が語る子どもたちとの日々はめまぐるしい。子どもと親の面会交流、施設を出て自立する子の準備、自立後も連絡を取り合いさまざまな相談に応じる「アフターケア」も職員の仕事だ。

 職員は子どもと日常的に関わる児童指導員ら43人を含めて62人(非常勤を含む)。就学児5.5人につき職員1人などの配置基準は満たしているが、若松さんは「手厚い支援のためには、もう少し人数が必要」と話す。

暴言を吐かれても… 苦労が吹き飛ぶ瞬間

 20年職員として働き、7年前に施設長となった若松さん。虐待のトラウマなどを抱えた子どもに暴言を吐かれ、「必死に対応しているのに、なぜ思いを理解してくれないのか」と心が折れそうになったこともあったという。

 それでも、苦労が吹き飛ぶ瞬間があった。「年取ったら面倒見てあげる」。十数年前、幼い頃から施設で過ごし、問題が起きるたび、根気強く向き合ってきた女の子が、高校を卒業して施設を出ていく時に若松さんにかけた言葉だ。

 親など養育者と安定した愛着関係がつくれなかった子は際限なく相手に要求したり、わざと怒らせたりすることがあるとされる。「なんでこの子はこういうことを言うのか、言葉の裏側を考えるようになった。子どもに成長させられた」と若松さん。「やりがいを感じる時はすぐには来なくて、だいぶたってから来ます」

改善の進む労働環境 発信方法に工夫を

 拘束時間が長いなど厳しい労働環境が指摘されてきた児童養護施設。最近は、子どもたちが家庭的な環境で成長できるようにと小規模化が進み、施設にいる子の約半数は6~8人単位で生活している。国や自治体による補助も拡充され、例えば、6人のグループホームに配置する職員6人分の人件費は公費で賄えるようになった。

 少人数の子を複数体制で丁寧にケアでき、休みも取りやすくなるなど、働く環境は改善してきているようだ。「子どもが最善の利益を享受するためにも、職員が大切にされ、長く働き続けられることが必要」と、若松さんは力を込める。

 ただ、職員を募集しても集まらない施設は多い。施設に特化した採用情報サイト「チャボナビ」を運営するNPO法人チャイボラ(東京)は今年、サイトを充実させ対象地域を増やす。大山遥代表(36)は「若い人はSNSで就職活動をするのに、施設側が追いついていない」と指摘。「オンライン説明会を開くなど、各施設の良さ、働きがいをもっと発信したい」と話す。

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