子ども食堂を開くピアニストが「インクルーシブコンサート」 子どもが騒いでも大丈夫
すべての子に音楽「仲間外れにしない」
インクルーシブとは、「包み込む」という意味。かみ砕いて言えば「仲間外れにしない」「みんな一緒に」。子どもの貧困問題と向き合う中で、「すべての家庭の子どもたちに平等に音楽を届けたい」と立ち上がった。
出演者は金川さんはじめ、サクソフォンの竹内沙耶香さん(41)、歌はソプラノの島田佳子さん(52)。「翼をください」「いのちの歌」はじめ、映画「アナと雪の女王」の挿入歌「レット・イット・ゴー」やアニメ「鬼滅の刃」の主題歌「紅蓮華(ぐれんげ)」など13曲を演奏した。
このコンサートは寄付を募るチャリティーでも、施設を訪れる慰問でもない。違う環境で育つ子どもが一緒に音楽を体感し、相互に理解を深める。参加した女性は「演奏中に子どもが大声を出しても包み込む雰囲気があり、安心して親子で音楽を楽しめました」と感想を話した。
コロナ禍で痛感 困窮家庭が抱える問題
金川さんは母の死をきっかけに2017年に子ども食堂を立ち上げた。闘病中に「元気になったら社会のためにボランティアをしたい」と話していた母の遺志を継いだ。これまでに延べ2449人に食事を提供。コロナ禍で会食ができなくなると、食料品の配布に切り替え、延べ1095世帯に届けた。
ピアニストと子ども食堂代表。2つの顔を持つ金川さんは、周囲から誤解を受けないよう2つの活動には一線を画してきたという。しかし、困窮家庭が抱える問題の根の深さを知るにつれ、2つの顔を1つにして「共生社会の実現」を訴えたのが今回のインクルーシブコンサートだ。
「コンサートは食後のデザートみたいで、絶対に必要というものではないけど、あれば幸せを感じるよね。今、たまたま困難な家庭にいる子どもたちも、そのちょっとした幸せを享受してほしい。ライブならではの音のエネルギーと振動を体感してほしかった」
「音楽は心を慰め、元気づけてくれる」
共演した竹内さんは音楽科で学んだ高校時代の3年間、金川さんと同じクラスだった。「彼女の人生の大きな船出に立ち会ったような気持ち」とエールを送る。「こんなに音楽を求めている人たちがいたんだ。音楽を届けに行こう、そう強く思わせてくれたコンサートでした。今後も関わっていきたい」と話す。
島田さんも「音楽は私たちの日常の中で、心を慰め元気づけてくれるかけがえのないもの。夢や希望、喜びや愛を伝えられるよう1曲1曲言葉を大切にして歌いました」。
コロナ禍で感染防止対策には万全を期した。成功裏に終え、金川さんは子どもたちの笑顔に、また元気と勇気をもらったという。「次回開催に向け準備を進めたい」と力を込めた。