ウクライナの子どもを守ろう 日本の小児科医が医療情報サイト開設 現地男性が戦火の中で翻訳
経口補水液、即席ベッド…
坂本さんは2015年から、ツイッターなどのSNSで医療情報を提供するプロジェクト「教えて!ドクター」を責任者として運営。子どもの病気や事故防止、防災や災害時のケアなどの普及に励んできた。
サイトの開設は、名古屋大医学部の学生時代に留学したポーランドに、避難民が押し寄せている現状を見て思い立った。知人でウクライナ出身の芳賀アンナさん(33)=愛知県春日井市=に協力を依頼。ウクライナ人の閲覧が多いフェイスブックのページで翻訳者を募ったところ、元慶応大教授のアンドリイ・ナコルチェフスキーさん(62)と、ダリア・パンチュクさん(33)=横浜市=が手を挙げた。
3日に公開したサイトは坂本さんら災害、新生児医療などが専門の医師4人が監修した。水と砂糖、塩で作って脱水を防ぐ経口補水液や、寒さを和らげるため段ボール箱に新聞やタオルを敷いて使う赤ちゃん用ベッド、会話をする、抱きしめるといった心のケアの方法、感染症対策…。子どもの心身を守るのに役立つ幅広い情報を紹介している。
警報の中、シェルターで翻訳
翻訳に協力した一人、日本で25年間にわたり宗教哲学などを教えたナコルチェフスキーさんは、慶応大を退職後の2020年3月に帰国。ロシア軍の侵攻が始まった2月下旬、故郷の首都キエフから、ポーランドとの国境約70キロにある西部の街リビウに避難した。
ロシア軍の攻撃は激しさを増し、1日に3、4回、空襲警報が鳴り響く。そのたびに地下のシェルターに逃げ込みながら翻訳を終えた。戦いに備え18~60歳の男性は出国が禁じられる中、現在は夫や父親と離れてウクライナからの出国を目指す子どもや女性を車でポーランドへ送り届けるボランティアをしている。
国境の検問所は車の渋滞が続いており、通過するのに丸一日かかったこともあるという。「恐怖で泣き叫んだり、声が出なくなったりしている子どもも目につく」と胸を痛める。不自由な生活を強いられる姿を目の当たりにしているだけに「長く住んだ日本からの呼び掛けは、本当にうれしかった」と話す。
サイトは、坂本さんの医師仲間やウクライナ人のつながりを通じて広く共有され始めている。坂本さんは「子どもたちはロシアの攻撃に加え、新型コロナウイルスなど感染症の危険にもひんしている」と指摘。「広くサイトを役立ててもらえたら」と期待する。サイトは日本語版もある。
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