日本生まれの母子手帳の輪広がる 日ロ女性2人の友情でロシア語版完成

栗田晃 (2018年9月28日付 東京新聞夕刊)
子育て世代がつながる
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ロシア語に翻訳された母子手帳

 日本で生まれた「母子手帳」のロシア語版が完成し、26日にモスクワで普及を目指すイベントが開かれた。「母娘」と慕い合う日ロの女性2人の友情が発端となったプロジェクト。2人は「母子手帳は単なる医療の記録ではなく、親の愛や喜びを込めたもの」と、ロシアへもその輪が広がることを願う。

思春期の対応や、父親の育児の役割も

 ロシア語版のベースは、一般社団法人「親子健康手帳普及協会」(東京都港区)が考案した20年分の母子手帳。小学校入学前までの一般的な母子手帳の内容に加え、成人するまでの病歴、ワクチン接種歴の記入欄、思春期での対応や、父親の育児での役割などについて説明もある。

 終戦直後に生まれた日本の母子手帳の様式は世界40カ国に広がるが、ロシアは未開の地。協会理事で、管理栄養士の白崎ユミさん(56)と、ロシア科学アカデミー病理学研究所のラリサ・スクラトフスカヤさん(74)との友人関係から計画が生まれた。30年前、飛行機で隣り合わせたことをきっかけに交流を続けてきた2人。スクラトフスカヤさんは「ユミは日本にいる私の娘よ」と目を細める。

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26日、モスクワの日本大使館での母子手帳普及イベントに参加した白崎ユミさん(左)と、ラリサ・スクラトフスカヤさん

「注がれた愛情知ることができる」

 白崎さんが2年前、母子手帳の取り組みを紹介すると、共感したスクラトフスカヤさんが「ロシアでも広めたい」と申し出た。ロシアの女性医師らの協力で、英語版をロシア語に翻訳。レイアウトを手掛けた白崎さんは「気付いたらあっという間に翻訳作業が進んでいた」と熱意に感謝する。

 ロシア政府の許可を得て、国立産科・婦人科・周産期医学研究センター(モスクワ)が協力。今夏までに1万部を印刷して学会や同センターで配布した。ロシアでは主に各医院にしか治療の記録がなく、普及イベントに参加した医師らも「転居した人たちが、継続した治療を受けるのに役立つ」などと評価した。

 「子どもが大きくなって母子手帳を見れば、医療の情報だけでなく、自分に注がれた愛情を知ることができる」とスクラトフスカヤさん。今後も白崎さんらと共に、ロシアの実情に合わせた改良を続けていくという。

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