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予防接種のし忘れ 「日ごろの診察に母子手帳」で防ごう

(2018年5月15日付 東京新聞朝刊)

 病気に対する免疫力が未熟な子どもを重篤な疾患から守るための予防接種。愛知県や沖縄県などで感染が拡大したはしか(麻疹)をはじめ、法律で定められたワクチンの多くは複数回の接種が推奨されている。ただ、ワクチンによって接種する年齢や回数、間隔が異なるため、かかりつけ医と相談しながら具体的なスケジュールを立てて接種することが必要だ。

「スケジュールの把握大変」

 大型連休が明けた5月上旬、名古屋市北区の津村こどもクリニック。予防接種だけを受け付ける時間帯に、乳幼児を連れた母親が次々と訪れた。長女(4つ)が日本脳炎の追加接種を受けた同区のパート女性(27)は「子どもが3人いて予防接種のスケジュールを把握するのが大変。実際は小児科に任せきり」と明かした。

子どもを対象にしたワクチンの種類はここ10年で大幅に増えた。予防接種法に基づき、国や自治体が接種を強く勧める「定期接種」だけでも9種類あり、うち8種類は複数回の接種が推奨されている。

一方で、接種の方法は1994年の法改正後、学校や保健所での集団接種から、医療機関で受ける個別接種が基本になった。副作用による健康被害が社会問題化し、接種の判断が個人に委ねられたためだ。

しかし、接種のスケジュールを個人が管理するのは難しい。接種の年齢や回数、間隔などがワクチンによって異なるからだ。肺炎球菌のように、初回接種が遅れると、接種できる回数が減るワクチンもある。

小学校低学年までは母子手帳の提示を

クリニックの津村治男院長(66)が重視するのは、診察時での母子手帳の提示だ。接種の間隔が年単位であくワクチンもあるため、津村院長は接種時だけでなく、日ごろの診察から子どもの接種状況の把握に努めている。「他院で予防接種を受けることもある。間があくと親は次の接種を忘れることがあるが、母子手帳があれば状況が分かるので接種漏れを防ぐこともできる。少なくとも小学校低学年までは提示することが有用」と話す。

ワクチン製造を担うファイザー日本法人(東京)も母子手帳の活用を提案している。約1万人の母親に昨年行った調査では、診察時にいつも母子手帳を見せる割合は、1歳で6割、5歳で4割弱と、子どもが大きくなるにつれて下がる傾向があった。

肺炎球菌の追加接種の接種率は、母子手帳を提示しないグループが86%で、提示するグループより8ポイントも低かった。担当者は「母子手帳があることで医師と適切にやりとりでき、接種につながる」とみている。

相次ぐはしか感染 不安な人はまず抗体検査

愛知県や沖縄県などで相次ぐはしか患者のうち、名古屋市内の中学生1人はワクチンを2回接種していた。国立感染症研究所によると、接種1回で免疫がつく人は95%以上、2回で99%以上。完璧とはいえないが、ほぼ感染を防いでいる。

2回接種を勧めるのは、1回だけでは免疫がつかなかったり、ついたとしても1割程度は免疫が衰え十分ではなくなると考えられるためだ。2回接種後に感染しても症状は軽く、周囲にうつす危険性も低い。

同研究所感染症疫学センターの多屋馨子室長は「2回接種した記録がなく、罹患(りかん)もしていない人は免疫が十分ではない可能性がある」と指摘。「2つの条件に当てはまり、海外へ行く予定のある人や学校など集団で生活している人、医療、保育の関係者、未接種の乳児がいる家族は早く受けてほしい」と話す。

ただ、多くの人が一斉に接種に走れば、流行が本格化したときにワクチン不足に陥る可能性もある。名鉄病院(名古屋市西区)予防接種センター顧問の宮津光伸さん(68)は「免疫のある人が接種すればワクチンは無駄になる。不安な人はまず抗体検査を受けて」と呼び掛けている。