虐待、性被害…居場所がない少女のための「ぐるぐるカー」 千葉の支援団体がワゴン車で話を聞きます
蓮村瑞希 (2022年10月21日付 東京新聞朝刊)
虐待や何らかの事情で家に居場所がない少女を孤立や性被害、自殺などから守るため、一般社団法人「マザーズコンフォート」(千葉市若葉区)がワゴン車を使った活動「ぐるぐるカー」を展開している。車の中で食べ物や生理用品を無料で提供し、女性スタッフが話し相手になる。毎月1回、夜の千葉市中央公園内に止まっている。
コロナ禍で18歳以下の虐待相談が増加
マザーズコンフォートは2019年5月に発足。かねて行政の母子支援に限界を感じていた千葉市生活自立相談センター非常勤職員の大谷明子さん(51)と、市内で子ども食堂を運営する田中照美さん(43)が意気投合し設立した。
従来は、望まない妊娠をした少女が病院へ行く際に同行するなど、行政がカバーできない支援をしてきたが、コロナ禍で18歳以下の若年女性の虐待相談などが増加。逃げ場がなく、悩みを深めていることから、2020年からは居場所づくりに力を入れている。
ワゴン車の中だから落ち着いて話せる
ワゴン車内に落ち着いて話せる場を設ける「ぐるぐるカー」がその一つで、居場所と相談窓口を提供する一石二鳥を狙う。今年1月のスタート当初は繁華街をぐるぐる巡回していたが、3月からは夜にたたずんでいる若者が多い千葉市中央公園に落ち着いた。
代表理事を務める大谷さんによると、家に帰れない子たちはお金も行くあてもなく「とにかく孤独」。行き着く先は短時間で高給が得られるガールズバーなどで、稼いだお金はホストにつぎ込むといった先の見えない日々。性病や妊娠の危険が潜む一方、彼女たちにとっては好都合かつ楽しい生活のため、寄り添おうとしても引き戻すのが難しいという。
「パパ活」に手を出さないように支援
SOSの出し方がわからない女性を見てきた大谷さんは「抜け出せなくなる前にこっちから会いに行って悩みを聞いてあげなければ。彼女たちが夜の仕事やデートの見返りに金銭を受け取る『パパ活』に手を出す前に、必要な支援につなげたい」と語る。
先月22日のぐるぐるカーには、20~30人が立ち寄った。この日は、支援を必要とする女性はいなかった。「今は種まきの段階。つながりのきっかけをつくるために継続させなければいけない。似たような団体がもっとできてほしい」と大谷さんは願う。