「丸見えで着替えられない」「トイレが暗く不安」 長引く避難生活で子ども、女性の悩みが深刻に
運営側の大半が男性 声上げにくく
「ここだと丸見えだから、着替えられるタイミングがなくて」。石川県珠洲(すず)市内の避難所に両親と身を寄せる高校2年の女子生徒(17)が明かす。床に布団を並べただけの避難所は、他の避難者との間に段ボールなどの仕切りもない。着替えができるのは、更衣スペースのある自衛隊の風呂に入る夜だけという。翌日着る服に着替え、そのまま寝る。「みんな同じ環境だから」。自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
別の避難所の女性(29)は、トイレの問題を挙げる。避難所脇にある仮設トイレは男女共用で、夜になると周囲に明かりがほとんどない。「暗いとやはり不安。何もないとは思うけど、夜は基本的に行かないようにしている」と話す。
内閣府では2020年、女性や子ども、高齢者らすべての人が安心して過ごせる避難所運営のガイドラインを公表。男女別の更衣室や授乳室、キッズスペースなどを盛り込んだ。しかし、運営側の大半が男性の避難所も多く、声を上げにくいのが実態だ。
誰でも使える生理用品ボックス設置も
女性目線での支援は、少しずつ広がっている。月経と生理用品に関する課題解決に取り組む大阪大の「MeW(ミュー)プロジェクト」では、トイレに設置する、誰でも使える生理用品ボックスを同県七尾市などに寄贈した。珠洲市では、各地から派遣された女性の自治体職員が避難所を回り、困り事や要望などを聞き取っている。
「減災と男女共同参画研修推進センター」の浅野幸子共同代表は、避難所を個人ごとに仕切ることには課題もあると指摘。「体調不良者の変化が分かりにくくなり、災害関連死につながる恐れもある」として「避難所ごとに、状況に応じて柔軟に対応してほしい」と話した。
女性や子どもの休憩場所に クリニック2階を開放
「もし性被害を受けたら、ここへ」
能登の人たちを支えることは「使命」と語り、本来は休診日だった地震発生翌日の2日、診療と支援を始めた。風呂に入れない場合に体を清潔に保つ工夫や生理中の対策など、医療、健康情報をLINEで発信。医療関係者から届いた支援物資の生理用品や下着、妊婦用スパッツ、オムツなどを配る。
クリニック2階は原則休診日以外、女性や子どもの休憩場所に開放。コーヒーや菓子を置き、ソファや学習机のある部屋も用意した。「避難生活が長引くと疲れてくる。5分でもほっと落ち着く場所を」と願う。避難生活で不足しがちな栄養を補うサプリメントも配っている。
診療の合間に市内の避難所を回り、医療、健康面の助言に加え、女性や子どもに1人で行動しないよう注意を呼びかける。女児が手を引っ張られるなど、不審者についての相談もあった。防犯ブザーや笛を持ち歩くよう呼びかけ「もし性被害を受け、誰にも言えなかったら、ここに来ても、オンラインでも相談できる」と話す。
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