美容家 君島十和子さん 夫とは24時間ほぼ一緒。「どこか欠陥がある」同士で補い合って
「夕ご飯は6時」に縛られていた私
娘が2人いて、もう成人です。すっかり大きくなりましたが、子育てしていた時は、芸能界を引退し、夫の会社や設立した化粧品メーカーで働いていた頃。育児と仕事のどちらも100%できないもどかしさがずっとありました。
私の母は専業主婦で、夕方6時にはテーブルに温かいご飯が並んでいました。でも、私は仕事が終わってから準備をするので、どうしても7時、8時と遅くなる。「6時に夕ご飯にならない」という罪悪感が常にありました。時々、早く帰って6時に夕ご飯を始めようとすると、「まだご飯の時間じゃないよ」と誰も食べない。「6時」に縛られていたのは、私だけでした。
家庭では、私が元気で明るくしていることが、家族の幸せの源になる。完璧な夕ご飯ができないからって、一人でストレスをためてイライラするより、おかずがちょっと少なくても笑顔で食べられる方を優先しよう、そう思いました。
「全力で仕事をしない人」と見られて
当時は、共働きが当たり前ではない時代。でも、社会とつながるため、仕事を続けたかった。出産後は産む前のように働けないと悩むこともありました。娘たちが幼い頃は時短勤務をしましたが、仕事量を減らしたわけじゃない。それでも「全力で仕事をしない人」と見られたこともあります。
今では、専業主婦になるのか、働き続けるのか、働き方もフルタイムか時短勤務かなど、選択肢はさまざまです。子どもの年齢や性格、周囲の環境などで変わります。どんな選択も間違いではないし、正解もありません。子育て中の女性は自分を責めず、堂々としていていいと思います。
ストレスだった「晩ごはんどうする?」
夫とは職場が一緒なので、24時間ほとんど一緒です。夫は働く母親に育てられたので、育児や家事にも協力的です。でも、同じように働いているのに、夕ご飯をつくるのは私。仕事の帰り道に「晩ご飯どうする?」と聞かれるのがストレスだったこともあります。「簡単でいいよ、ギョーザとか」と言われると、「ギョーザだって簡単じゃない!」と思ったり。でもコロナ禍で、夫が料理に目覚めました。自分が食べたいものをつくりたい、と食材を一緒に買いに行くように。今では仕事から帰って料理をすることが、大変なことを理解してくれています。
お互いどこかに欠陥がある人間だと自覚していて、夫とは足りない部分を補い合っています。例えば私は一つのことに夢中になると、他のことに目がいかない。マルチタスクが女性の強みと言われるけど、私は苦手。猪突(ちょとつ)猛進なんです。夫はそんな私を一歩ひいて見て、冷静に「まあまあ」と声をかけてくれる。お互いに補い合っている自覚があるうちは、ずっと仲良くやっていけると思っています。
君島十和子(きみじま・とわこ)
1966年生まれ、東京都出身。雑誌の専属モデルや女優として活躍後、結婚を機に芸能界を引退。その後、夫が経営する服飾専門店で勤務。2005年、化粧品メーカー「FTC」を設立。現在、クリエイティブ・ディレクターとして化粧品の開発や啓発に携わる。2023年4月に「アラ還十和子」(講談社)を出版するなど著書多数。