俳優 美馬アンナさん 息子と夫と踏み出した「隠さない生き方」

長田真由美 (2023年4月2日付 東京新聞朝刊)
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息子について話す美馬アンナさん(由木直子撮影)

カット・家族のこと話そう

「手がない」四肢欠損症で生まれて

 3歳の息子は、四肢欠損症で右手首から先がありません。出産直後に「手がない」と私が言って、医師たちも気がつきました。

 四肢欠損に対する知識が全くなく、衝撃を受けました。入院中、何をやっても涙が出る。世界が真っ暗になるというか、闇に包まれるというか。そんな思いでした。

 そんな私を見た夫(千葉ロッテマリーンズの美馬学投手)から「おなかの中にいる時に分かってたら産まなかったの?」と聞かれた。即答できないでいると、「右手のことが分かってても俺は産んでほしいと言っていた。この子が良かった。俺たち二人の親のもとに生まれてよかったと、この子を幸せにしてあげる自信がある」と言われました。

 それで、はっと世界が明るくなりました。夫はけがで何度も手術する挫折を味わっていて、パラリンピック選手との関わりもあり、偏見がなかった。この人と一緒なら大丈夫かもと自信が湧いてきた。だんだん、現実を受け入れられるようになりました。

覚悟の上で公表 反応にびっくり

 2カ月後に、四肢欠損のことを公表しました。今後、インスタグラムで子育てやママとしての日常も発信したいのに、右手を隠している写真ばかり載せるのは違うんじゃないかなと。隠さない生き方をしてほしいのに、親である私が隠すのはおかしい。夫も「隠すことないでしょ。恥ずかしいことじゃないんだから」と。じゃあちゃんと説明して、心境を語ろう、息子のことや四肢欠損のことを知ってもらおう、と思いました。

 インスタで公表した時、ある程度の覚悟を持っていました。偏見がある人に何か言われるかもしれないと思っていたから。でも一人もいませんでした。四肢欠損に限らず、自分に障害があったり、子育てで悩んだりしている人たちからたくさんコメントが寄せられ、びっくりしました。私が今まで知らなかっただけで、こんな世界があったんだと勇気をもらいました。息子が新しく私に任務を与えてくれたと思っています。

今度は私の番 悩む人に伝えたい

 先日、ストライダー(幼児向けのペダルのない自転車)に乗る練習をしました。息子は指がないからハンドルをつかめない。そこで、テニスのグリップに巻くテープをハンドルの両端にグルグル巻いて凹凸をつくり、へこんだ部分に手首がはまるようにすると、ぐいぐい走れるようになって本人もうれしそう。少し工夫するだけで、背中を押してあげられると思いました。

 私が現実を受けとめられない時、同じような家族の方たちとつながり、前を向くきっかけをもらいました。今度は私の番。障害の有無にかかわらず、子育てで悩む人たちに「あなただけじゃないよ」と伝えていきたいです。

美馬アンナ(みま・あんな)

 1987年生まれ、神奈川県出身。CMや舞台、テレビと幅広く活躍する。2013年に堂本光一さんの恒例ミュージカル「Endless SHOCK」でヒロインのリカ役を務める。2014年にプロ野球選手の美馬学投手と結婚、2019年に長男を出産。子育てについて、イベントや講演で発信している。

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なるほど!

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グッときた

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もやもや...

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もっと
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すくすくボイス

  • じじ says:

    東京新聞で拝読させていただきました。ご両親の姿勢・考えに感動しました。

    今、孫が1歳4ヵ月です。可愛くてしょうがありません。これからどう成長するのかは分かりません。とにかく元気で長生きしてほしいです。ありのままの孫をずっと大事にしていきたいと思っています。

    世の中には、精神的、肉体的に障がい者を持った方が結構いらっしゃると思います。何をもって「障がい」というのか?「障がい」が個性として受け止められるような世の中であってほしいものです。また、戦争・貧困・格差・差別・虐待・殺人・自殺などが無い世の中であって欲しいですが、現実はそうではありません。

    年をとれば、動けなくなり・ボケ始めます。これも「障がい」と言えるかもしれません。

    お子さんが将来、「障がい」を理由にいじめられたり、就職で不利な扱いなどされるかもしれませんが、プラス思考で乗り越えていって欲しいと思います。人生、山あり谷ありですが、美馬家族に幸が多からんことを祈念いたします。

    じじ 男性 70代以上

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