〈アディショナルタイム〉少年サッカーには「グリーンカード」がある
谷野哲郎
千葉県柏市にある少年サッカークラブ「カナリーニョFC」の内藤滉太くん(12)は、試合中にうれしいカードをもらったことがある。遠くに転がったボールを全力疾走で取りに行ったときのこと。審判が、胸のポケットからさっと緑色のカードを掲げたのだ。
サッカーでは反則した際、警告を意味する「イエローカード」や一発退場の「レッドカード」が有名だが、実は緑の「グリーンカード」というものがある。
日本サッカー協会が12歳以下の大会を対象に2004年度から推奨・導入しているもので、倒れた相手に手を差し伸べたり、ボールがラインから出た際に正直に申告したりと、「フェアプレーや相手を思いやる行為といった、良い行いをした選手やチームに与えられるカード」(同協会)なのだそうだ。
スポーツの素晴らしさを教えてくれるサッカーだが、負の側面を垣間見ることもある。悪質な反則や乱暴なプレーに差別発言…。罰則のカードは必要だが、「してはいけない」赤や黄色ではなく、「もっとやってみよう」の緑のカードが広がれば、何かが変わる。もし、ワールドカップでこのカードが見られたら、世界が変わると思う。
ちなみに国際サッカー連盟では、ラグビーに倣い、イエローよりも悪質でレッドよりも軽い反則を犯した選手に10分間の一時退場を命じる「オレンジカード」の導入が議論されたことがある。そう遠くない将来、審判のカードはもっとカラフルになるのかもしれない。
ともあれ、青空の下でプレーする選手には緑のカードがよく似合う。そう思う。
「もう一度、あのカードをもらうんだ」
内藤くんはうれしそうに笑った。
「アディショナルタイム」とは、サッカーの前後半で設けられる追加タイムのこと。スポーツ取材歴30年の筆者が「親子の会話のヒント」となるようなスポーツの話題をつづります。