全国2例目の母乳バンク、日本橋でピジョンが開設 早産で低体重の赤ちゃんに無償提供
小さく生まれると腸が未発達 母乳なら負担が少なく、免疫も
母乳の提供は、医師の診察と血液検査を受けて異常がないことなどが条件で、母乳は冷凍し日本母乳バンク協会へ郵送する。これを協会が低温殺菌し、連携する病院の新生児集中治療室(NICU)へ送る。
母乳には、腸管の粘膜を成長させるオリゴ糖や、病原体から体を守る免疫グロブリンなどが含まれる。小さく生まれた赤ちゃんは腸の発達が未熟で、母乳は負担が少なく腸を成熟させるという。ドナーミルクは、死亡リスクが高い壊死(えし)性腸炎にかかる率が人工乳の約3分の1との報告もある。
「母乳が出るまでのつなぎ」年間2000Lを600人の赤ちゃんへ
しかし、お母さんが出産してすぐに母乳が十分に出るとは限らない。他のお母さんの母乳を低温殺菌せずに与える「もらい乳」は、感染管理上好ましくないと考える病院は増えている。日本母乳バンク協会代表理事の水野克己・昭和大教授は「ドナーミルクは、母乳が出るまでのつなぎ。小さな命の栄養だけではなく病気を予防する薬になる」と意義を語る。
オープンした母乳バンクは、ドナーミルクの安全を保つため、低温殺菌する機械や保管する冷凍庫などを備え、協会職員2人が常駐する。年間2000リットルの母乳を処理し約600人の赤ちゃんに届ける。提供量は、2014年に開設した1カ所目の昭和大江東豊洲病院(江東区豊洲)の約6倍だ。
低体重の赤ちゃんは年間約7000人 母乳提供の応募を受け付け中
この日は、ピジョンの本社でセレモニーが行われ、北沢憲政社長が、2018年にブラジルの母乳バンクを見学したときのことに触れ「免疫の面で重要。どうして日本でできないのか」と、開設を決めた理由などを述べた。水野さんは「将来の日本を支えるのは明日生まれる子どもたち」と話し、NICUで亡くなった子のため搾乳を続けた女性から「自分の子どもの代わりに使って」と母乳を送られた例を紹介した。
協会によると、日本では1500グラム未満で生まれる赤ちゃんが年間約7000人いる。母乳を提供する女性は、日本母乳バンク協会のWebサイトで応募を受け付けている。