母乳育児、悩まずトライ! コーヒー、お酒、脂っこい食べ物は大丈夫?

(2017年7月28日付 東京新聞朝刊)

 8月1~7日は「世界母乳育児週間」。母乳で育てると、赤ちゃんが病気になりにくくなり、母親も産後の回復が早まるなど、さまざまな効果があることが知られるようになった。しかし「母乳が思うように出ない」と悩んだり、授乳中は我慢しないといけない食べ物があると言われたり、ストレスをためる母親は多い。スムーズに始め、長続きさせるポイントを専門家に聞いた。

「何を食べても大丈夫」脂っこい物もOK

 「脂っこい食べ物で母乳の通り道の乳管が詰まることは一切ない。何を食べても大丈夫。ただ貧血や骨粗しょう症を防ぐため、鉄やカルシウムは十分取って」

 今月上旬、名古屋市千種区の星ケ丘マタニティ病院で開かれた「プレママおっぱい教室」。母乳育児支援に努めている小児科医、瀬尾智子さん(61)の話に妊婦10人が耳を傾けた。参加した1人は「甘い物は控えないといけないと思っていた。ストレスをかけないことの方が大事と分かり、気が楽になった」と話した。

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赤ちゃんに吸わせる角度を説明する瀬尾さん。顔は少し上を向かせ、口の中の天井に乳首が向くようにする

 厚生労働省の2015年度の乳幼児栄養調査では、母乳だけで育てられている赤ちゃんの割合は10年前より増加したものの、生後1カ月で51%、3カ月で55%。一方、妊娠中に「母乳で育てたいと思った」と答えた母親は9割を超えており、希望よりも結果は少なくなっている。母親や赤ちゃんの事情で続けられないケースもあるが、瀬尾さんは「本来7~8割の赤ちゃんは母乳だけで育てられるはず」とみている。

産後すぐでも、吸えば「スイッチ」オン

 十分な量の母乳を出すには「赤ちゃんに吸ってもらうこと。しかも産後早く始めるほどいい」と言う。母乳を作るのは乳房にある乳腺。出産を終え、赤ちゃんをつないでいた胎盤が体の外に出ると「おっぱいのスイッチ」が入り、母乳が作られ始める。一方、赤ちゃんは生まれて1時間もたたないうちから自分で乳首を探り当てて吸う。すると、母親の脳に吸われた刺激が伝わり、母乳を作るホルモンが分泌される。

 母乳が本格的に出るのに48~72時間ほどかかるが、焦る必要はない。出生時の体重が十分な赤ちゃんの場合、その間の栄養を持って生まれているからだ。口を動かしたり、手を吸ったり。赤ちゃんのサインに合わせ、欲しがるだけ吸わせる。これを頻繁に続けると、乳腺から脳に多くの信号が送られ、母乳の量も増えてくる。

コーヒー、お酒、薬は飲んでも大丈夫?

 もう1つのポイントは抱き方と飲ませ方。最初は赤ちゃんも不慣れで授乳時間は1回30分、1日計6時間にも及ぶ。母親が座るいすの背もたれが倒せれば倒し、背中や腰にクッションを当てて楽な姿勢を取る。おなか同士がくっつくように抱き、赤ちゃんの下あごが乳房につくと、自分で吸い付いてくる。母親が前かがみになると赤ちゃんの口は離れてしまう。

図解 基本の抱き方・飲ませ方

 瀬尾さんは、薬や食べ物の影響についての質問をよく受ける。母親が薬を飲んでも、母乳から出る量は極めて少なく、抗がん剤など一部を除けば、ほとんどの薬が影響ないとされる。カフェインはコーヒーで1日2~3杯、授乳が3時間以上空いてきたら、ビールも缶1本、ワインならグラス1杯まで大丈夫という。

足りてるか悩みがち…目安の「回数」は

 母親が最も悩む「母乳が足りているか」との疑問には「(赤ちゃんが1日に)おしっこ6回、うんち3回していれば足りている」と瀬尾さん。「いつまで続けたらよいか」と聞かれたら「免疫が発達してくる2歳すぎまで続けるのが理想的」と答えている。免疫は母乳を続ける限り、赤ちゃんに届く。仕事復帰で断乳する母親が多いが「やめてしまうと病気をもらいやすくなる。夜だけでも続けると、赤ちゃんの安心感にもつながる」と助言する。

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