コロナで加速する少子化に危機感…「子ども家庭庁」を創設しよう 自民党に勉強会
縦割りで混乱 子ども行政の一元化を
「(コロナ禍で生活が)大変な子どもが増えているが、厚生労働省は(子ども支援より)目の前のコロナ対応に追われている。子ども家庭庁創設は、歴史的な行政の転換点になる」。国会内で2日に開かれた初の勉強会で、呼びかけ人の牧原秀樹衆院議員は元厚労副大臣の立場から、新組織の必要性を力説した。
子ども政策の所管は主に厚労省、文部科学省、内閣府にまたがり、縦割りの弊害も指摘される。象徴的なのが就学前の子どもの受け入れ先。保育園が厚労省、幼稚園が文科省、認定こども園が内閣府と分かれ、利用者を混乱させている。
勉強会は不妊治療を含む産前から出生、乳幼児期、学童期を経て成人になるまで対応する組織づくりを目指し、3月にも政府に提言を提出する。手応えはある。事務局を務める山田太郎参院議員が1月末、菅義偉首相に組織の私案を提示したところ、後日に官邸側から「前向きに検討したい」と連絡があり、提言を急ぐよう求めてきたからだ。首相は、報道各社の書面質問を受けて今月9日に発表した回答でも、子ども家庭庁に関し「まずは党の意見をうかがいたい」との考えを示している。
コロナ対策費の2%にも届いていない
現時点の子ども政策への国の支出は乏しく、一体感も希薄だ。1月28日の参院予算委員会で、国民民主党の伊藤孝恵氏は、3回編成された2020年度補正予算に盛り込まれたコロナ対策のうち、子ども関連の直接的な支援額の割合が一次で1.3%、二次で0.5%、三次で0.1%にとどまったと指摘した。縦割りの影響からか、該当するデータが見つからず、各府省の予算資料を分析して独自に作成したという。
国連児童基金(ユニセフ)は、各国がコロナ対策で行った財政支出のうち、子どもや子育て世帯向けは2%にすぎないと警鐘を鳴らす。だが、伊藤氏の分析を見る限り、日本は2%にさえ遠く及ばない。
予想より10年早く出生数80万人割れ
コロナ禍により、少子化は加速している。厚労省によると、2020年1~10月の妊娠届け出数は前年同期比5.1%減。緊急事態宣言が出た後の5月は17.6%減と大きく落ち込んだ。
日本総合研究所は、これらを基に2021年の出生数は79万2000人と試算。国立社会保障・人口問題研究所が2017年に示した推計より、約10年も早く80万人を割ると指摘した。
国立成育医療研究センター(東京)では、1月の分娩(ぶんべん)数が前年より3割減った。左合(さごう)治彦副院長は「コロナで社会や将来に対する不安感が強く、子を持つ余裕がない人もいるのではないか」と危惧する。
子ども行政を一元化する必要性は、過去にも自民党の野田聖子幹事長代行や旧民主党政権が訴え「子ども省」「子ども家庭省」を掲げた。勉強会の参加議員は「菅政権は縦割り行政の打破を掲げ、待機児童ゼロや不妊治療の保険適用など、重視する政策の多くが子ども家庭庁の分野に関わる。機会を逃さず前に進めたい」と実現を期す。
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