不妊治療の支援拡充へ 助成増額や所得制限の緩和、政府が検討 昨年の出生数最少86万人に危機感

川田篤志 (2020年4月27日付 東京新聞朝刊)
 政府は不妊治療に対する支援制度を2021年度にも拡充する方針を固めた。助成増額や所得制限の緩和を検討する。2020年度に治療費用などを調査し、支援拡充の具体策を決める見通し。複数の政府関係者が明らかにした。2019年の出生数が推計86万4000人と過去最少になったことを受け、支援強化が必要だと判断した。

現在は初回最大30万円、2回目以降15万円助成

 政府は近く取りまとめる第4次少子化社会対策大綱に「不妊治療に関する実態把握を行い、男女を問わず不妊に悩む方への支援に取り組む」と盛り込む。公表後、パブリックコメントを経て5月下旬にも閣議決定する。大綱は2025年までの少子化対策の指針となる。

 不妊治療の助成制度は政府が2004年度に導入。現在は初回で最大30万円、2回目以降は15万円を最大6回まで補助する。治療開始時に妻が43歳未満の夫婦が対象で、夫婦の合計所得が730万円未満であることが条件。2017年度の支給実績は約14万件。

体外受精1回50万円超も 「若い人ほど諦める」

 2回目以降の助成額15万円は、1998年に国が患者約800人から聞き取った治療1回の平均費用30万円の半額に当たる。当事者から「現在の実態と懸け離れている」と再調査を求める声が上がっていた。

 体外受精、顕微鏡で確認しながら精子を卵子に注入する顕微授精といった「特定不妊治療」は保険の適用外。不妊治療者を支援するNPO法人「Fine(ファイン)」が2018年に調査したところ、43%が体外受精1回の平均額を「50万円以上」と回答。10年の16%から2.5倍に増えた。4人に1人は所得制限で国の補助の対象外となったという。

 Fineの松本亜樹子理事長は「若い世代ほど費用が高額で治療をあきらめてしまうカップルが多い。少子化は待ったなしの課題。治療の選択肢が広がる制度改正にすぐにつなげてほしい」と本紙に語った。

少子化と不妊治療

 1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は2018年に1.42。国立社会保障・人口問題研究所の2015年の調査によると、不妊治療を経験した夫婦は5.5組に1組。日本産科婦人科学会の集計では、体外受精や顕微授精など「生殖補助医療」で生まれた新生児は2017年に約5万6000人で、2017年までの累計で58万人。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年4月27日

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