帝王切開「残念だったね」と言われ… 経験者のもやもやに寄り添う、3度体験した女性のエール

(2021年5月7日付 東京新聞朝刊)

帝王切開で出産した母親向けの本を出版した細田さん=さいたま市で

 帝王切開で出産した母親の悩みに耳を傾けてきた細田恭子さん(56)=さいたま市=は、自身も3人の子を帝王切開で出産した経験者。1月に「帝王切開で出産したママに贈る30のエール-もやもやを消し、自分らしさを取り戻す」(中央法規)を出版した。母親たちに「悩んでいるのは一人じゃないと気付いてほしい」と呼び掛ける。

自然分娩でなかった自分を責める人も

 著書では、帝王切開の出産に対して周りから「残念だったね」などと言われて傷ついたり、自然分娩(ぶんべん)ではなかったことに「何も頑張れませんでした」と自分を責めたりする経験者の声を紹介。それぞれの気持ちに「残念なんて言ったら赤ちゃんに失礼」「気づいていないだけで、心も体もすごくがんばってきました」と励ましや前向きになれるアドバイスを載せている。

 細田さんは長年、帝王切開経験者の悩みを抱える女性向けに「お産の振り返り」という講座を県内外で開催してきた。出産を振り返り、語ってもらうことで心の引っ掛かりを解消する手助けをしている。

講座で帝王切開の出産について話す細田恭子さん(2019年11月撮影)=岐阜県で(細田さん提供)

サイトを開いたら、次々に共感の声が

 活動のきっかけは、2000年に匿名で立ち上げたホームページ。夫の転勤に伴って佐賀県に引っ越し、周りに知り合いがいなかったため、転勤族の日常をつづろうと始めた。ある日、「3回も帝王切開をしている人なんていないだろう」と経験を載せると、ホームページの掲示板に「私もそうだった」「悲しいよね」と共感するメッセージが相次いだ。それまでの投稿には、ほとんど反応がなかったので驚きだった。

 細田さんも知人から「帝王切開で生まれた子は我慢強くないらしい」と言われてショックを受けたという。周囲に悩みを明かせずにいたが、ホームページに多くの人が書き込んでくれた経験談に「分かる、分かる」とうなずき、1人じゃないのだと勇気づけられた。「子どもを無事に出産するのが大事と分かっているけど、なかなか帝王切開のもやもやは抜けない」と振り返る。

「講演して」医師や助産師からも依頼

 掲示板を通じ知り合った人たちが実際に顔を合わせて始まったのが、「お産の振り返り」。各地で開くと、産科の医師や助産師から「講演してほしい」と依頼が舞い込むようになった。医療者側は母子の命や健康を守ることに集中していて、帝王切開で出産する母親の気持ちに理解が及んでいなかったというのが理由だった。

 細田さんがホームページを開設してから20年。まだまだ帝王切開で出産した母親に心無い言葉をかける人は多いと感じている。夫や父母、赤ちゃんに関わる仕事に従事する人の中にもいるという。「帝王切開で出産した女性の心のモヤモヤに寄り添う支援者が増えてほしい」と願い、活動を続ける。

細田恭子(ほそだ・やすこ) 

さいたま市生まれ。2000年に立ち上げたサイト「くもといっしょに」には、300を超える帝王切開の体験談が寄せられ、理由別に公開されている。「帝王切開カウンセラー」として、お産を振り返る会の他、帝王切開をする妊婦向け講座なども開く。講座は、コロナ禍のためオンラインを中心に実施している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年5月4日

コメント

  • 出産って自分でコントロールできることではないから、他人にあれこれ言われる筋合いはないのにね、と思ってしまいます。 南米のチリに住んでいたことがあります。あちらでは帝王切開が当たり前で、知り合いのチリ
     
  • わたくしも29歳、39歳に長男、長女を出産しました。赤ちゃんとお母さんの骨盤のサイズが合わず、吸引でなく、切りました。でも。誰のせいでもありませんが、30年して初めていいますね。看護師さんが内診して、