「半歩」でもいい。女性が孤立から踏み出せる場所を  産後うつとパニック障害の経験から生まれた交流会

浅野有紀 (2020年2月5日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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「自分をいたわることを忘れないで」と話す山田さん(左)とサポーターの志賀さん=さいたま市で

 暗く、冷たい海の底にいるようだった-。さいたま市北区のペン習字講師・山田ひろ子さん(39)は出産後、うつやパニック障害に長らく苦しんだ。誰にも相談できなかった経験をもとに昨年6月、女性のための交流会「Hanpopo(はんぽぽ)」を発足。孤立から「半歩」でも踏み出すきっかけになればと、訪れる人の悩みに耳を傾けている。

成長が遅い長男に焦り、うつ症状… 誰にも相談できず

 山田さんは23歳で結婚し、間もなく妊娠。不正出血が多く、近くの実家で寝たきりだった。予定日より3週間早く、帝王切開で長男を出産。ミルクを思うように飲んでくれず、周りの子より成長が遅いことに焦り、うまく育児ができない自分を責めた。

 体重は15キロ近く増え、体力が落ちた。人と会うことを避け、笑うこともなくなった。テレビで紹介されたうつの症状に当てはまると思ったが、夫や両親に理解してもらえるか不安で、相談できなかった。

ペン習字と夫の協力がきっかけで、自分を変えられた 

 自宅にこもりがちだったが、「子どものために変わりたい」と考えるように。長男が1歳になった頃、インターネットで目に留まった市の子育て支援センターを頼った。そこで出会ったママ友にペン習字を教えたことを機に、自宅近くで教室を開くまでになり14年目になる。

 うつ症状のほか、帝王切開の手術台での恐怖が蘇(よみがえ)り、発作が起きるパニック障害にも苦しんだ。心配した姉が夫に事情を説明し、夫が家事に協力してくれるようになったことで、「つらい時は寝る」「おろそかにしていた自分の食事を見直す」「趣味を見つけてみる」―など、自分を大切にできるようになった。

昨年7月に初開催 共感する女性が「サポーター」に

 「いつか体調が戻ったら、元気がなくても足を運んでみようと思える居場所をつくりたい」。そう長年考えていた交流会を、昨年7月に大宮区で初めて開催。その後も毎月、少人数でお茶を飲みながら、それぞれの悩みを語り合った。対象は、独身女性や不妊治療、死産を経験した女性ら、母親に限らず参加を呼び掛けている。

 参加した浦和区の主婦志賀志穂さん(45)は、乳児を迎え入れた里親。地域では、若い母親たちになじめなかったといい「里親としてでなく、40代の新米ママとして本音が言える場所が欲しかった」と話す。

 今年から、はんぽぽの理念に共感した志賀さんらがサポーターとして交流会に入ることになり、産後うつやシングルマザー、アラフォーママなどテーマごとに開いていく。

一人で抱え込まないで 2/15、さいたま市で開催

 交流会を通し、かつての自分のように一人で背負い込む人が多いと感じる山田さん。そんな彼女たちに「自分の心と体に栄養を与えることを忘れないで」と伝えている。

 次回は今月15日、さいたま市北区のプラザノースで5つのテーマで開く。詳細は「Hanpopo 半歩前に進みたい女性のコミュニティーサークル」のホームページで。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年2月5日

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