性の話は下ネタじゃない。性教育ユーチューバー・シオリーヌさんが中高生に「生きるための知識」を伝える理由
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動画の視聴者を、子ども扱いしない
「今の日本で暮らしていると性の話が下ネタのように扱われる。でも、そもそも私は、性の話をタブーとか恥ずかしいとか全く思っていません。生きていくために絶対に必要な知識。もっとふつうに学んで、気軽に話せることにしたい」
そう語るシオリーヌさんは、2019年から中高生向けに性教育の動画配信を始めた。コンドームの具体的な装着法、婦人科や泌尿器科はどんなところか、性欲にどう向き合うか…。実物を並べたりイラストを使ったりしながら、誰もが抱く性の疑問に、明るく軽快な口調で答えていく。視聴者を「子ども扱い」しないところが人気の秘密だ。
人気講演をまとめた著書『CHOICE』
そんなYouTubeで人気の講演をぎゅっと1冊にまとめたのが著書『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』だ。タイトルには「まずは自分にどんな選択肢があるのか知って、その上で自分の意思で選んでほしい」との思いを込めた。生理用品ひとつとっても、最近普及し始めた月経カップや吸水パンツなど多様な製品を写真付きで紹介する。「だって、ただの衛生用品ですから」と言われると、なるほどと納得する。
以前は看護師・助産師として総合病院に勤務。産婦人科病棟を担当した時、妊婦から聞いたのは「妊娠して初めて体の仕組みを知った」「避妊についてきちんと教えられたのは初めて」という意外な言葉だった。「思春期に知識を得ていたら、ライフプランを立てやすいのに」と感じた。
次に担当したのは精神科病棟の子どもたち。家や学校に居場所がない子たちは、搾取する大人に頼らざるを得ない状況で過酷な体験をし、精神疾患を発症することもある。シオリーヌさんは「生きづらい若者は、性的なトラブルに遭うリスクが高い。社会が支えなければ」と実感した。患者向けの性教育プログラムを始めると、子どもたちが相談に来てくれるようになった。
知識を教えなかった問題が置き去り
今も、望まない妊娠で生まれた赤ちゃんを遺棄する事件などが後を絶たないが、妊娠・出産した女性だけを責める風潮は根強い。義務教育で性の知識を教えてこなかったこと、周囲の大人が支援しなかった問題は置き去りにされている。
そんな中、「待っているだけじゃダメだ。自分から会いに行かなきゃ」と、シオリーヌさんが中高生につながる方法を考えて行き着いたのがYouTubeだった。高校時代にお笑い芸人を目指して磨いた表現力が存分に生かされた。
ネット環境がない子でも読めるように
本を出版したのは「ネット環境がない子でも学校の図書館や保健室で読める。大人にも性教育の現状を変える必要性を伝えられるから」。なんと出版後に多かった反響は、「10代でこの本を読みたかった」という大人の声だったという。
先月、さらに低年齢の子どもに向けて、女らしさや男らしさとは何かを考える『こどもジェンダー』(ワニブックス)も刊行した。「お互いを尊重しあう関係をつくるための学びが性教育だと思っています」と語るシオリーヌさん。これからも挑戦は続く。
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