トーマス、ミッフィー、だるまちゃん…都営地下鉄の「子育て応援スペース」全4路線に 2024年度には倍増
車いすの女の子「ロッテ」のデザインも
「どんな子も乗っていいんだよ、と受け入れてもらえたように感じて、うれしかった」。渋谷区の会社員茶谷久美子さん(43)は2月末、次男空(そら)さん(8つ)を初めて車いすで都営地下鉄に乗せた。空さんと電車に乗るのは、まだ小さくて抱っこしていた頃以来、5年ぶりだった。
子育て応援スペースの第4弾として、都は三田線に「ミッフィー」で知られるディック・ブルーナさんのイラストを採用。車いすに乗った女の子「ロッテ」のイラストを見て、茶谷さんは喜んだ。
空さんは先天性の感染症で、重い障がいがあり、外出時は車いす。「人の目が気になるし、子どもが声を出すと『うるさい』という視線を感じてしまう。電車やバスで出かけるのは躊躇(ちゅうちょ)していました」
車内で、空さんは興味深そうに周りをキョロキョロ見ていた。「イラストを通して、車いすの子が当たり前にいると知ってもらえたら」と茶谷さんは話す。
2019年に初導入 11パターンに
子育て応援スペースは2019年7月、「きかんしゃトーマスとなかまたち」を採用した大江戸線の3編成でスタートした。それぞれ2車両に装飾したスペースを設置。お年寄りや車いす利用者ら誰でも利用できる。
2019年2月、子育て中の親らが、電車内で危険を感じた経験などのアンケート結果を基に、小池百合子知事に子育て応援車両の導入を求める要望書を提出。都は、社会全体で子育てを応援する雰囲気をつくろうと取り組みを始めた。
装飾は、トーマスのほか、絵本の「ぐるんぱのようちえん」、かこさとしさん作「だるまちゃん」シリーズ、そしてブルーナさんのデザインの4種類11パターン。2022年8月に新宿線、9月に浅草線、今年2月に三田線に拡大。今は計36編成だが、2024年度にも計71編成に倍増する。
「子連れは専用スペースに」は本末転倒
車両の走行位置は都営交通のアプリで分かる。都交通局電車部の小林靖茂課長は「もっと導入してほしいといった声をいただいている。子育てへの社会の理解が広がるきっかけになれば」と期待する。
一方、ベビーカーを利用しやすい環境づくりを国土交通省の協議会で訴えてきたNPO法人「せたがや子育てネット」代表理事の松田妙子さんは「子連れは専用スペースに、となってしまっては本末転倒」と指摘。都の取り組みは評価しつつ「どこに乗っても優しくされる、いろんな人が乗りやすい環境になってほしい」と話した。
小田急、西武も「子育て応援」
「子育て応援」を掲げる鉄道会社は他にもある。
小田急電鉄は通勤車両の3号車を「子育て応援車」とし、「お子さま連れのお客さまに、安心してご乗車いただける車両です」と書いたステッカーを貼った。今年4月からは、電車内での子育てにまつわる心温まるエピソードを漫画にして掲示している。
西武鉄道は4月、「西武鉄道キッズクラブ」を開設。記念日のグッズプレゼントや、対象施設で特典や優待が受けられるサービスを始めた。
国交省も5月の1カ月間、電車やバスなどでベビーカー利用に関するキャンペーンを実施。ベビーカーは折り畳まずに乗れることの周知や、ベビーカー、子ども用車いすのマークの普及を目指す。