〈奥山佳恵さんの子育て日記〉41・遊び方は違っても、同じ場所で過ごせる幸せ

(2023年5月24日付 東京新聞朝刊)

「あそびにきてくれてありがとうー!」。うれしくて、お友達を抱きしめる次男

同級生との「遊びのミゾ」がついに…

 困ったことが起きてしまった。いつかやってくるだろうと思っていた、ダウン症のある次男と同級生たちとの「遊びのミゾ」。4年生の時は、同級生たちも次男と遊びたいから、即興でルールを考えた「新ドッジボール」などで遊べた。次男が「遊びたい」と主張するかるた遊びをしてくれていたのは、5年生の時。6年生となった今、ついに同級生の男子たちから「かるた遊びはもう、ちょっと…」という辞退の声が飛び出した。そりゃ、そうだ。「ここまでよくお付き合いしてくれました!」と拍手を送りたい。

 家に遊びに来てくれるみんなにとっては、小さな子と遊ぶようなもの。次男との間を取り持つ役割の私は、知恵を絞らなければならない。「じゃあ、かるたの枚数を3分の1にしよう!」「勝者にはお菓子を贈呈します!」。そう提案してみたら功を奏した。

 盛り上がったかるた大会が終わったのもつかの間、次男は「(おもちゃの)飛行機を飛ばしにいこう」と言い出した。居合わせた男子6人全員がうつむく。こればかりは次男に譲歩してもらおう。「飛行機は2つしかないから、みんなが遊びたがっているかくれんぼをしよう」と説得した。「分かった」といったん納得したものの、気持ちの整理がつかない次男は突然「もう、いい!」とカンシャクを起こした。

カンシャクを起こした次男を叱ったら

 自分の気持ちばかりを優先させる次男を、「身勝手だ」と𠮟って廊下に出した。すると、次男の様子を心配した男子たちが一人ずつ、廊下へ続くドアから顔を出し、「もう、いい!」と、次男のマネをした。クスクス笑いが起こる。一人、また一人と続いたので私も最後に「もう、いい!」。心の広いみんなのおかげですっかり和み、次男に声をかけたらすんなり、かくれんぼ遊びに応じてくれた。

 折り合いはこうして、だんだんとつかなくなっていくのだろう。遊びに来てくれても、スマホでゲームに興じる子もいる。次男はそんな時、横で一人遊びをしている。遊び方は違うけど、子どもたちが隣同士で遊んでいる場所で過ごせることを幸せに思う。

 男子6人が帰った数日後、部屋の隅からお友達の靴下が片方だけ出てきた。一体どんな遊び方をしてるんだ(笑)。遊んでもらっている立場ではあるけれど、まだまだ「お互いさま」なところもある。一緒に、育ち合っていこうね!

奥山佳恵(おくやま・よしえ)

 俳優・タレント。2011年に生まれたダウン症の次男を育てる。長男はすでに成人。