〈奥山佳恵さんの子育て日記〉36・つい「できないこと」に目がいってしまうけれど

(2022年11月18日付 東京新聞朝刊)
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「お片付けできたー!」と報告してくれた次男。私の方がまだ、洗濯物が片付いていません

奥山佳恵さんの子育て日記

次男はプリントも宿題も自分から

 どうして人は、人のできないところにばかり目がいってしまうのだろうか。いや、目がいかない寛容な人も世の中には多くいるだろうから、「どうして私は」が正しい。今年はたちを迎えた長男はいまだ、脱いだ靴下を洗濯かごに入れられない。ベッドから床へお布団が落ち、その周りは空のペットボトルやお菓子のごみが散乱…。ベッドメーキングなんて、夢のまた夢。

 そんな兄と、兄にブーブー文句を言う母の姿を見て育った弟、つまり私の次男は違った。学校から帰ると、自ら保護者に渡すプリントを提出。宿題を確認し、すぐに取りかかる。「自由時間はその後」と決めている。えらい。

 小学校時代の長男はあまりにもプリントを出してこないので、「プリント(出して)!」というLINEのスタンプまで作ったほど。そこまで知る由がないはずなのに、えらい。先日なんて、夜眠る前に自分からおもちゃを片付け出して、「これはボクのしごとだからね」とまで言い出した! 「えらい」を超えて驚いた。あなたは本当に、テキトーを自覚している私の子ですか?

「生きててくれてありがとう」と…

 と、ここまでに「えらい」を繰り返したエラそうな私は、というと最近、夫から「どうして覚えてないの?」とよくあきれられる。会話のタイミングは一日で最も忙しい、朝。テーブルでお茶でも飲みながらじっくり話した内容ではないから、ついこぼしてしまっているのだと思う。それか、夫がやや本気で心配し始めている私の脳の衰えか。(前者であってほしい)

 ついこの前「また覚えてないの?」と言われた私からとっさに出た言葉は「できないところばかりじゃなくて、できているところも見て!」だった。できないことや苦手なことを責められても不安になるだけ。私だって、家族がやらない料理、掃除、洗濯、ごみ出しを一人でやっている。

 「できるところを見て、褒めて」と言いつつ、それは子どもに対しても同じだと思った。長男は、片付けが苦手だけど困った人を助けることができる。うそをつかず、素直で優しい。そんな存在が「今日も元気に生きている」ことは、すてきだ。子育てしているとついつい忘れて、つまらない「できないこと」に目がいってしまうけれど、元々は、生きていてくれるだけで十分なはずだった。文句を言う代わりに、長男に「今日も生きててくれてありがとう」と言ってみようかな。そんな私の言動におびえて、ベッドメーキングしてくれますように! (俳優・タレント)

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なるほど!

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グッときた

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もやもや...

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もっと
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