〈奥山佳恵さんの子育て日記〉44・子どもがいてくれたおかげで見えた景色

(2023年9月13日付 東京新聞朝刊)

次男とお友達の娘ちゃん。大きくなっちゃうその日まで、まだまだ海でウチの坊やと遊んでね

「終わりがあるって寂しいね」

 夏休みとは、なんて早さなのだろうとブルブルと震えた8月の終わり。我が家は、夏休みに突入したと同時に「それイケー!」と飛び出していきました、海にプールに、大人たちが。感激したのは地元の盆踊りが4年ぶりに開催されたこと! やぐらを囲んで「きよしのズンドコ節」に大はしゃぎしました、大人たちが。決して初めての参加ではないのに、4年は空白の時間だったのか、次男はみんなが声をそろえて叫んでいる「きよしってどなた?」とキョトン顔でした。

 海まで歩いて行ける場所に住んでいるので、毎年お友達も泊まりで遊びに来てくれます。さながらにぎやかな合宿所状態です。海の家でスイカを食べる小学生たちの姿はとても絵になる。ウットリ眺めながら「さて、いつまで海に遊びに来てくれるだろう」と声がもれた。遊びに来てくれた小1の女の子は高学年くらいまでかな、中学はもう難しいかな。

 子どもが親とはもう行動しないという日は必ずやってくる。子どもが一緒じゃなければ行かない場所は次第に増えていく。子どもがいてくれたおかげで見えていた景色って、たくさんあったんだなぁと改めて思う。気がつけば、うちの次男もついに小学生最後の夏でした! 次男の場合はフォローが必要なので、まだしばらく子育てが楽しめそうですが「終わりがあるって寂しいねー」。お友達と思わず肩を寄せ合った。

 長男は高校生まで付き合ってくれていましたが、今思うと付き合いがいい方だと思う。まぁ、我が家の場合、特に私は自分が楽しみたくて行動していて、付き合ってくれるのはいつだって子どもたちの方なのですが。「きよし!」のかけ声しかり。

 そんな充実した夏の終わり間際で、なぜ震えが止まらないかというと、やっと思い出したから。小学生の夏休みの代名詞である「宿題」の存在を! どうしよう、ドリルが1冊まるまる白紙のままだった! フォローが必要な子なので、宿題にも親が全力でフォローする必要があります。そんなワケで私は一部のダメダメ小学生と同じように、8月の終わりに震えていました。大人になってもこんな気持ちにさせてくれるのも、子どもがいてくれたおかげ…なんてのんきな気持ちは置いといて、半泣きでためてしまっていた宿題に2人でとりかかった! ごめんね美良生(みらい)ー!

奥山佳恵(おくやま・よしえ)

 俳優・タレント。2011年に生まれたダウン症の次男を育てる。長男はすでに成人。