川口いじめ 被害者が要求した調査記録、市教委は多くを開示していなかった
市教委作成の文書14枚だけ のちに県教委が72枚を開示
元男子生徒は入学まもなくからサッカー部で会員制交流サイト(SNS)で中傷されたり、Tシャツのえりを引っ張られ倒されるなどのいじめに遭った。2年生だった2016年9月に自傷行為をして不登校に。学校や市教委は当初、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と認めず、県教委や文部科学省の指導で17年2月から第三者調査委員会を開催。18年3月、「いじめが不登校の原因」と報告書をまとめた。
学校や市教委に不信感があった元生徒は同年1月、いじめに関する全記録の開示を市教委に請求。54枚が開示されたが、32枚は元生徒や保護者が書いた経緯や手紙だった。いじめについて市教委が作成したのは、対応を時系列で列挙した文書など14枚にとどまった。
資料が少ないと感じた元生徒側は18年11月、県教委へ、自分のいじめに関し市教委が提出した文書の開示を請求。今月、103枚が開示され、市教委作成の文書は72枚に上った。いずれも市教委が開示したものと別の文書だった。
行政管理課「もっと開示できるのでは、と指摘したが…」
市教委指導課は取材に対し、「当時は調査委員会で審議中だった。調査委の会議は条例で非公開と定められ、調査・審議の対象になり得る文書は開示しなかった」と説明。しかし、いじめ防止法などでは、調査委は被害者側に適切に情報提供し、要望を聞きながら進めるよう求めている。
市教委は元生徒側に「調査委に関する文書は開示しない」と通知していたが、具体的にどんな文書が存在するか知らせていなかった。指導課は「普段のやり方で隠す意図はなかった」とし、開示制度を担当する市行政管理課も了承したと説明。一方、行政管理課は「もっと開示できる文書があるのではと指摘したが、最終決定は指導課」とした。
専門家「隠したとみられても仕方ない」
個人情報開示に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の話 こんなに異なる文書が別の機関から出てきたケースは、聞いたことがない。自分の情報の開示請求なので、できる限り開示するのが原則。県に提出した文書を本人に開示せず、文書名も伝えないのは、隠していたとみられても仕方ない。