子どもの声が社会を変えた(3)「小中学校の後輩にエアコンを」静岡県の高校2年生

 今年国連で採択されて30年の「子どもの権利条約」は、子どもが意見を表明する権利を保障し、その意見を尊重するよう求めています。学校で、地域で。子どもたちの声は私たち大人にさまざまなことを気づかせてくれます。
 静岡県富士市では、男子高校生が集めたネット署名により、市内の全公立小中学校に一気にエアコンの設置が進むことになりました。

母校の小学校の前でエアコン設置を求めた活動について話す今田恭太さん=静岡県富士市で

小学生の熱中症死を受けて調べたら「設置ゼロ」

  「通学路を汗だくで歩く小学生を見て、学校にエアコンを付けてあげたいと思った」。静岡県富士市の高校2年、今田恭太さん(16)は昨年、市内の公立全小中学校へのエアコン設置を求め、署名サイト「Change.org」で署名を集めた。願いは届き、今年9月までに普通教室に取り付けられる。

 昨年7月、愛知県で小1男児が熱中症で死亡。今田さんは、小学生のころ度々暑さで体調を崩したことを思い出した。調べると、公立小中の普通教室へのエアコン設置率は全国平均49.6%(2017年)に対し、富士市はゼロ。

ネットで署名6000人 市教委「尻を叩かれた」

 後輩たちを守るため、ネット署名を開始した。「貧弱に育つ」「ぜいたくだ」などの反対意見を想定し、サイトでは「熱中症になると丈夫になるのか」「地球温暖化で昔より気温が上昇している」などと自分の考えも書いた。

 署名は3カ月で約6000人分集まり、届けると、市長は「重く受け止める。できるだけ早く付ける」と受け取った。市は、2年後までに普通教室全教室へ設置すると決めていたが、この署名やほかの子どもからも訴えが相次ぎ、1年前倒しに。市教委の担当者は、「署名に尻をたたかれた感じがした。説得力があった」と話す。今田さんは「声を上げることは大切だと実感できました」と笑顔を見せた。

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