「笑点」の春風亭昇太さんが手ほどき 浅田飴こども落語会 「テレビやネットではない生の体験を」

 東京・神田明神にある神田明神文化交流館「令和の間」で、昨年12月1日「浅田飴こども落語会」が開かれました。浅田飴社長の堀内邦彦さんが「声に関する伝統や文化を応援したい」という思いで2017年から無料で開いており、今回で3回目になります。

「落語には家元や宗家がありません」

 出演は人気のテレビ番組『笑点』の司会でおなじみの春風亭昇太さんと春風亭柳好さん。会場には抽選で当選した親子100人がつめかけました。開演前には、会場に設置された高座で記念撮影ができるようになっており、子どもたちは正座してポーズをとっていました。 

 いよいよ「こども落語会」スタートです。まずは昇太さんが登場して、子どもたちのために「落語とはどういうものか?」というお話から。

 「落語は誰が始めたのかわかっていません。歌舞伎や能のように家元や宗家がありませんから、誰でも自由にやることができます。僕のお父さんはサラリーマンで、お母さんは主婦でした。わりと珍しい古典芸能なんです。」

「めくり」の文字の余白が少ない理由は…

 「日本人は物を小さくするのが得意です。小説などの読みものを短い俳句や短歌にしました。お芝居を小さく、小さく、小さくしたものが落語です。世界じゅうの演劇でもっとも省スペースでできるのが落語と言われています」

 ほかにも、出演者の名前を書いた「めくり」の文字が太くて余白が少ないのは「客席がお客さんでいっぱいになりますように」という願いが込められているからとか、落語家が着物姿なのは一人で男も女も演じられるためとか、大人が聞いても「なるほど」と思うようなことがたくさん。

 柳好さんが着物の着方を実演するなど、落語という日本の伝統文化を子どもたちに身近に感じてもらうためのさまざまな趣向も。

そばをすするしぐさに大笑い

 柳好さんの「牛ほめ」は、与太郎がおじさんの新築の家を褒めようとして言い間違えばかりする楽しい噺です。子どもたちには耳慣れない言葉も多かったかと思いますが、与太郎のトンチンカンな言動が笑いを誘っていました。

 昇太さんの演目は「そば清」。もりそばを何枚食べられるかという賭けを持ちかけられた大食い自慢の男の噺です。なんといっても豪快にそばをすする昇太さんのしぐさに子どもたちは大笑い。笑うだけじゃなく、ちょっとゾッとするオチも楽しんだようでした。

 終演後、昇太さんにあらためてお話を聞きました。まずは小学生の前で落語を演じることについて。

 「普段は大人向けに話していますが、子ども向けの場合は話しながら『あ、ここは変えよう』とか『ここはもう少しデフォルメしてやったほうがいいな』などと気づくことがとっても多いんですよ。だから、すごく刺激的で面白いですね」

 この日の落語では、昇太さんも柳好さんもお金の単位を「円」にしていました。

 「事前に変えようと思っていました。古典落語なので本来は出てこない言葉ですが、お金って一番リアリティーのあるものですから、子どもにもリアリティーが伝わるようにしたんです」

 実際、「そば清」で賭け金が「10万円」になったときは、子どもたちがどよめきに包まれていました。続いて、子どもの前で演じるネタはどのように選んでいるのでしょうか。

知識は必要ないけれど、飽きずに楽しんでもらう仕掛けを

 「ネタ選びは、ストーリーもさることながら、見て楽しいものを選んでいます。食べるしぐさなどがあったほうがわかりやすいですからね」

 最初に落語についての説明をしていたのは「落語をやる時間を短くするため」と笑う昇太さん。

 「どうしても落語だけだと飽きちゃうので、着物を着るところを見てもらったりしました。落語は知識が必要なものではありませんが、ちょっと知っておいてもらったほうがいいかなって」

 子どもたちが最後まで飽きずに落語を楽しめるよう、プログラムも昇太さん自身で考えているそうです。

わからなくてもいい、「生で体験」が大切

 最後に、子どもたちが生の落語を体験することについて、昇太さんのお考えを聞きました。

 「(子どもの)年齢もまちまちなので、意味のわからない言葉などもあったりするでしょうが、わからなくてもとりあえず体験しておくことが大事だと思います。僕は地方で生まれたので、落語を生で体験するのがけっこう遅かったのですが、東京に住んでいればいろいろな機会がありますからね。『落語を好きになってもらいたい』というよりは『生のものを体験してもらいたい』という気持ちです。テレビやインターネットでは伝わらない生のものを見るという体験を早めにしておくのはすごく大事なことだと思います」

 「浅田飴こども落語会」は、生の落語を体験した子どもたちの、たくさんの笑顔が見られる素敵なイベントになりました。「お客様からはたくさん反響をいただいています。できるならば、ぜひ続けていきたいですね」と浅田飴の堀内社長は意気込んでいます。

(書き手・大山くまお 協力・須田泰成、経堂こども文化食堂)