子どもに建築教育を 機能、環境、家族…総合的な学びで興味が進化する 伊東建築塾とGAKUがワークショップ
興味をカタチに オリジナル家具づくり
立ったり、寝たり、座ったり…自由に自分の居場所を見つけられる家具。机になったり、腰掛けたり、自由に楽しめるカラフルなシルクハット形の家具。3月7日から12日にかけて、渋谷パルコ内にあるスペース「GAKU」で開かれた作品展では、昨年9月から半年にわたって開かれたワークショップ「自分の興味をカタチにする」で、子どもたちが完成させたオリジナル家具の原寸大模型が披露されました。
ワークショップは、建築家の伊東豊雄さんが塾長を務め、小学校高学年向けの「子ども建築塾」を開く「伊東建築塾」と、10代の若者がアーティストやデザイナーなどからクリエイティブ教育を受けられる場として2020年にできたGAKUが協力して開講しました。家や公共建築、街について学ぶ建築教育につながる取り組みとしてまず、身近な家具のアイデアを形にすることを目指しました。家具は実際にGAKUに置くことを想定。4つのグループでアイデアを出し合い、意見をぶつけながら、模型の完成にこぎ着けました。
同じモノを作るのではなく、アイデアを
作品展初日の7日には、今回の取り組みを振り返り、これからの建築教育のあり方を考えるトークイベントが開かれました。講師を務めた家具デザイナーの藤森泰司さんは「自分が何に関心があるかを探ることから始めた」と説明。自分自身が日常の中で何に引かれるのか、どんなところに引っかかりを感じるのか、といったことをとらえるために、街中や家族の動作など、暮らしの中で、「おや?」と思ったり、どこか気になったりするモノや場面を写真に撮ることからスタートしたそうです。
時代を超えて愛されている家具や、今の時代に人気の家具を実際に、見て、触れる機会も設けられました。「たとえば、椅子はこうでなくてはならないという考えを緩やかにしていくことが必要。そして、自分がなぜこれが好きなのかを言葉で説明することも求められる」と藤森さん。自分の中から湧き上がるアイデアやイメージを基にした創作を目指すのが、みんなで同じモノを上手に作ろう、という目的の体験教室とは違うところです。
「いろんなこと」が組み合わさった存在
毎月札幌市から参加していたという笹木縁(ゆかり)さん(11)は「自分の中にあったイメージがデッサンを経て、実物大の模型として完成できたことがとても楽しかった」と話し、「将来は建築家になりたい」と夢を膨らませていました。
伊東さんは「建築って、小さな家であっても、家族の問題、機能や構造のこと、環境、気候などいろんなことが組み合わさった一つの存在。そのことを考えてもらうことが建築を学ぶ面白さではないか」と話します。「学校教育ではカリキュラムがぎっしりで、なかなか総合的な学びができない中で、僕たちがこういうところを受け持っていくべきなんだろう」と語っていました。GAKUを運営する事務局長の熊井晃史さんは「10代が興味をジャンプアップできるような学びや遊びの機会を提供できる企画を、これからもつくっていきたい」と話しています。
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