医療的ケア児の通学断念や家族の離職を防ぐため、超党派が法案を国会提出へ

(2021年4月19日付 東京新聞朝刊)
 人工呼吸器の管理やたん吸引などの医療的ケアが必要な子どもへの支援を強化する法案を、自民、立憲民主など超党派の国会議員らでつくる「永田町子ども未来会議」が今国会に提出する。学校配置の看護師不足で子どもが通学を断念したり、学校への付き添いや送迎で親が働けなかったりといった医療的ケア児を取り巻く課題の解消を目指す。

学びたいのに毎日通えない

 都内の特別支援学校中学部1年生の山田萌々華さん(12)は、看護師不足が原因で週2回しか通学できない。「毎日通いたい」と訴えるが、寝たきりで人工呼吸器を使うため、看護師が対応できない日は保護者の付き添いが必要。共働きの両親にはそれが難しい。母の美樹さんは「法律で、毎日学校に通えるような環境整備につなげてほしい」と話す。

 医療的ケア児の数は、厚生労働省の推計(2019年)で約2万人。医療技術の進歩に伴って助かる命が増えたことなどから、過去10年間で倍増した。法案は、医療的ケア児を巡る課題が浮き彫りになる中、国会議員を中心に関係府省やNPO、医師らも加わり15年に発足した同会が取りまとめた。議員立法として提出し、全会一致での成立を目指す。

 法案は医療的ケア児について定義し、「健やかな成長」と「家族の離職の防止」につなげることなどを目的に据えた。

 居住地域で支援に差が出ないよう、国や自治体、学校などの設置者は医療的ケア児と家族の支援に取り組む「責務」があると規定。保護者の付き添いがなくても医療ケアが受けられるように、看護師などの配置を求めた。

 各都道府県に、家族の相談に対応し、情報提供や助言をする「医療的ケア児支援センター」を設置することも盛り込んだ。

親が働き続けられる環境を

 東京都内で、気管切開によるたんの吸引が必要な長男(8つ)を1人で育てる40代の女性Aさんは、昨年4月に長男が特別支援学校へ就学したのを機に仕事を辞めた。専用の通学バスの台数が足りないため、当初は車いすの息子と家からタクシーで通った。往復5000円以上の負担は重く、学校近くに引っ越した。

放課後デイの送迎車に子供用車いすのまま乗りこむ医療的ケア児の息子を送り出すAさん(右)=一部画像処理

 昨年12月に長男単独で通学バスに乗れるようになり、非正規職員の仕事を再開したが、新型コロナウイルスの影響で仕事が激減。3月は春休みに入って預けられる場所が一層減り、朝から預けられたのは放課後デイサービスが1日だけだったこともあり、約10日しか働けなかった。Aさんは「医療的ケア児を持つ親が働き続けられる環境を整備してほしい」と訴える。

 ただ、今回の法案は支援強化に向けて社会的機運を高めるための理念法で、具体的な規制や罰則はない。

 当事者からは慢性的な看護師不足が続く状況を踏まえ「急には事態は変わらない」と冷めた意見の一方、「法律ができれば(支援拡大に)風穴を開けてくれる」と期待の声が上がる。

 医療的ケア児の事情をよく知る「全国心臓病の子どもを守る会」(東京)の斉藤幸枝理事は「必ずしも看護師が付きっきりでなければいけない子どもばかりではない。個別の状況に見合った対応が可能な見直しも期待したい」と話す。

医療的ケア児とは

 支援法案は「日常生活及び社会生活を営むために、恒常的に医療的ケアを受けることが不可欠である児童」「18歳未満及び高校などに在籍するもの」と定義。自力での呼吸や食事などが難しく、胃腸まで管を通して栄養剤などを注入する経管栄養や人工呼吸器の管理、たん吸引などを日常的に行う必要がある。歩ける人や、知的障害と肢体不自由の重複で寝たきりの人もいる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年4月19日