子どもがLINEを始める前に、トラブル回避の備えを LINE側の担当者に注意点を聞きました

(2021年5月21日付 東京新聞朝刊)

コミュニケーション講座では、インターネットの特性を子ども向けにわかりやすく解説している(LINEみらい財団提供)

 国内の約7割の人が利用するコミュニケーションツールのLINE。子ども同士が連絡や交流を円滑にできる便利さの一方、人間関係のこじれやいじめのきっかけになる危うさもある。子どもたちや保護者向けのLINEの出前講座から、トラブル回避のヒントを探った。

「人によって感覚が違う」ことを知る

 「子どもに人気のからい料理の『定番』といえば?」

 子どもたちの情報活用能力の向上に取り組む一般財団法人LINEみらい財団(東京)が全国の学校などで開いているコミュニケーション講座。この質問に対し、カレーを連想する子もいれば、マーボー豆腐と答える子もいる。LINE財団事業推進部長の西尾勇気さん(43)は「感覚の違いを感じ取ってもらうことがトレーニングの第一歩」と話す。

「夜遅い」の基準が人によって違うことを説明する資料(LINEみらい財団提供)

 「『夜おそい時間』といえば、何時から?」の質問では、「夜遅い」の基準が人によって違うことに気付く。それを知っていれば、延々とネット上のやりとりを続けてしまいそうなとき、一歩立ち止まって相手のことを考えるきっかけになりうる。

イヤな言葉は? スタンプの意味は?

 「悪口」について考える講座では、「友達から言われてイヤだなと感じる言葉はどれ?」という問題を設定。(1)まじめ(2)おとなしい(3)一生懸命(4)個性的(5)マイペース―の5つからそれぞれの子が選び、理由などをグループで話し合う。ここでも、「イヤな言葉」は人によって違う、相手のイヤな言葉が自分のイヤな言葉と同じとは限らない、と実感してもらうのが狙いだ。

実際のトークを見ながら、子どもたち同士が話し合う。「正解」はないが、感じ方はそれぞれであることに気づいてもらのが狙いだ(LINEみらい財団の資料を編集しました)

 ネット上のコミュニケーションの難しさも教える。例えば「面白い」と伝える際、文字だけの場合と、爆笑する顔のイラスト(スタンプ)を添えた場合では受ける印象が違うことを、LINEのトーク例を示しながら説明。一方で、相手の表情や声の調子が分からないため、誤解が生まれやすいことや、ネットに一度上げた言葉を完全には削除できないことも伝える。

18歳未満はID不可 制限は丁寧に 

 性犯罪など悪意を持って近づく大人を避けることも重要だ。LINEでは、会ったことがない人同士でも検索すればつながることができるIDを、18歳未満が使う端末では利用不可にしている。同財団事務局長の藤川由彦さん(46)は「スマホの契約は保護者名義が多いが、子どもが使う場合は正しく利用者登録して」と呼び掛ける。

LINEのIDは、18歳未満の端末では使えないようになっている(LINEみらい財団提供)

 Instagram(インスタグラム)やTikTok(ティックトック)など多様な会員制交流サイト(SNS)が次々と出る中、子どもが使うのに適しているか、大人の理解が追いついていない場合も多い。「アプリの使用を制限するフィルタリングはサービスごとにできる。丁寧にやってほしい」と藤川さん。SNS各社でつくる一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構のホームページでは、各サービスの機能や注意点を一覧できる。

保護者向け資料「家庭での対話編」では、ネットトラブルを防ぐ対策を解説している(LINEみらい財団提供)

 小学生でもLINEを使う子は珍しくない。西尾さんは、子どもが「使っていいのかな」「ちょっとまずいかな」などと迷ったり悩んだりしたとき、保護者や教員など周囲の大人に相談できる関係をつくることが対策のベースになると説く。「保護者だけで抱え込まず、大人同士がコミュニケーションを取ることも重要。私たち事業者や学校など、それぞれができることを考えていく必要がある」

 LINEみらい財団は、情報モラルオンライン授業の申し込みをホームページで受け付けている。