ぼっちは怖い…「#春から〇〇高校」入学前にSNSでつながり デジタルネイティブ世代に広がるハッシュタグ

子育て世代がつながる
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ツイッターで「#春から○○」とつぶやいた女子高生

 合格発表がある2月ごろから、ツイッターやインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)で「#春から○○高校(大学)」というハッシュタグが飛び交っているのを知っていますか。同じ学校に進学する人と入学前にSNSでつながっておくことで新学期当初、教室などでの「独りぼっち」を回避するためで、5年ほど前から頻繁に見られる現象だそう。子どもたちにとって、慣れない環境の中での安心材料になっているようですが、専門家は「リアルにぶつかり合う経験を大切にしてほしい」とも呼び掛けます。

「つながっている人がいる」安心感

 この春神奈川県内の高校に進学した横浜市の女子高校生(15)は3月、ツイッターに「春から○○(高校名)jk(女子高生)です!良かったらインスタつながってください」とつぶやき、インスタのQRコードと「#春から○○」を載せた。30人ほどと連絡を取り合い、入学後、同じクラスになった子から「席どこ?」とインスタでダイレクトメッセージが届き、見つけて手を振り合ったりしたという。

 つぶやいたのは「友だちがやっていたから。移動教室のときや休み時間にぼっち(独りぼっち)になりたくないし」。あらかじめネットでつながっている人が学校にいると思うことで安心感が得られ「やって良かった」と感じる一方で、その後、席が近くになった別のクラスメートと親しくなり、「今は、インスタでつながっていた子とは全然話していない」という。

居場所を確保する保険 後で解消も

 同市の高校2年の女子高校生(16)も昨年、「みんなやってるから」と入学前にツイッターに「#春から○○高校」とつぶやいた。新型コロナウイルスの影響で6月に開かれた入学式の日、フォローし合った子と放課後に昇降口で待ち合わせして「何組なんだね」などと会話した。しかし、つながった子とその後交流を深めることはなく「今思うと、あまり意味がなかったかも。でも、そのときの気持ちとしては安心できた」と振り返る。

 「入学式で『ぼっち』はまずいので、居場所を確保するための保険。子ども同士の利害が一致するので、そのあと友だちができれば解消する関係」。若者のSNS事情に詳しい筑波大の土井隆義教授(社会学)は「#春から○○」現象をこう解説する。

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土井隆義さん

「#春から○○」は10年ほど前に現れ、ここ5、6年は入学前にSNSで誰ともつながらない子のほうが少数派になるほど一般的になったという。土井さんは「当初はつながっているのが一部の子だけだったがSNSユーザーが増え、みんなが『やっておかないとまずい』と広まったのではないか」と分析する。

リアルにぶつかる経験を避けがち?

 今の若者にとって、入学式などリアルな場でいきなり他人と接することは、見知らぬ人とネットを介してやりとりすることよりもハードルが高いという。「席がたまたま隣になった人がどんな価値観なのか分からないが、ネットなら自分と感覚が合う人をあらかじめ探しやすく、いざとなったら(関係を)切りやすい」からだ。生まれたときからネットでのコミュニケーションが普及している「デジタルネイティブ世代」には当たり前の感覚で、成長してからネットに接した世代とは異なるそうだ。ただ、発信によって個人の生活圏や学校などが特定されることもあり、安全面でリスクもある。

 取材した高校生たちのように、入学前のやりとりはあくまで「保険」で、悪いことではないが、入学後も仲間内でネットの中だけでやりとりし、多様な友人たちとリアルにぶつかる経験を避けてしまいがちになることを土井さんは心配する。「価値観の違う他人ともいや応なく関わり、ぶつかり合うことで子どもたちは成長する。今の学生が傷つきやすく、ちょっと批判されると自分が否定されたように落ち込む背景に、リアルな場で人にもまれる経験が少ないこともあるのでは」と分析している。

取材を終えて

 「今どきは入学前の春休みのうちに、ネットでつながるんだって。怖くない?」。ママ友から初めてこの話を聞いたときには「つながってなきゃ圧力」がそんなに高いのかと衝撃を受けた。ところが取材した高校生は「安心できたけど、意味なかったかも」と涼しい顔。SNSをクッションにして、その先にちゃんとリアルな友だち関係を築いていることに安心した。

 でも本当は、価値観の違う人との出会いにワクワクしてほしい。かくいう大人が子どもたちに見本を示せているのか、まずは考えなきゃ。

すくすくボイス

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