不登校を経験した子の高校進学 今はさまざまな選択肢があります 「通信制」も20万人突破
「中学でできなかったことを」 資料を集め、選んだ全寮制
「不登校だった中学時代を思うと、今の息子はたくましくなった」。長野県に住む女性(44)が話す。長男(17)は「担任の先生と合わない」と中学2年から学校に行かなくなった。女性は「本人の気持ちが弱いからでは」と思い、登校を促しもしたが、後に同級生からいじめられていたと知った。「卒業まで気付いてあげられず、家にも学校にも居場所がない状態をつくってしまった」と悔やむ。
ただ、長男はインターネットで全日制や通信制高校などの資料を収集し、自分で進路を決めた。「行事にも、修学旅行にも参加できなかった。中学時代にかなわなかったことを高校でしたい、という思いがあったようだ」と女性。各高校が掲げる目標はさまざまで、遅れた学力を取り戻すことに力を入れたり、集団生活や人間関係を学ぶことを重視したり。長男と一緒に資料を見ながら「不登校を受け入れてくれる場所は多いと実感した」と言う。
選んだのは、県外にある全寮制の高校。自分で時間割を組めるなど、本人のやりたいことを尊重する校風に引かれたという。寮生活を通じ、以前より人とうまく付き合えるようになった長男は、時間が空いた週末にコンビニや飲食店でバイトもするように。女性は「この学校を選んで良かったと息子も喜んでいる。本人が納得できる選択が大切だと感じた」と話す。
登校できるとは限らない…通信制高校に注目 半数は不登校の経験者
8500人が学ぶ屋久島の広域通信制 「不登校」という言葉は使わない
学校法人KTC学園を母体とした広域通信制高校、屋久島おおぞら高校(鹿児島)。全国に約8500人の生徒がいて、不登校に限らず多様な子どもたちが学ぶ。同校に通う生徒の勉強や精神面を支える指定のサポート校は全国44カ所にあり、通学の日数や時間は生徒が自由に選べる。
「なりたい大人に近づけるよう導くのが学校の役割」と副校長の菊池亮平さん(36)。そのためにサポート校では1年生からキャリア教育を始める。声優やトリマー、eスポーツ、ネイルなど、さまざまな体験コースを用意。生徒は好きなものや興味のあるものを増やしながら、自分の可能性を広げていく。
同校では数年前から「不登校」という言葉は使わない。菊池さんは「この言葉が枷(かせ)となって、罪悪感を感じ、自分の長所や未来が見えなくなる生徒がいる。学校に行くことが目的ではなく、学ぶことが目的のはず」と強調する。「学校は出会いの場でもある。そこでどんな人と出会うかが、その先を決める。そうしたつながりの場を用意してあげたい」