不登校の子のきょうだいも行き渋り… 親はどんなスタンスでいればいい?

長田真由美 (2021年4月23日付 東京新聞朝刊)

不登校の先に

 家族に不登校の子どもがいると、そのきょうだいも学校に行き渋ったり、不登校になることがある。そんな子どもたちに、親はどう向き合えばいいのだろうか。専門家は、まずは親が自分を責めず、明るい姿を見せてはと呼び掛ける。 

長女が休み、しばらくすると弟も

 「姉弟2人が学校に行かない時期があって、本当にきつかった」。埼玉県の女性(52)は3年前を振り返る。最初に不登校になったのは、当時、高校2年の長女(19)だった。進級して1カ月ほどがたった頃、教室で孤立し、「行きたくない」と漏らした。「高校生だし、自分で決めていいよ」。女性はそう声を掛けた。

 中学1年だった弟(15)も学習面で周りについていけなくなっていた。長女が休み始めてしばらくすると、1日休んでは翌日登校するということを繰り返すように。女性は「この頃はそれほど深刻ではなかった。『今日は1人が行った』と思えたし、日中の世話も1人で良かったから」。

長女は「私が悪いのか」と苦しんで

 10月に入り、2人とも全く学校に行かなくなった。「家の中の雰囲気だけは暗くしたくない、と明るく振る舞った」と女性。「でも、どうしたらいいか分からず、職場に自転車で向かいながら、何度も涙を流した」と振り返る。

 不登校の支援団体からアドバイスを受け、「早起きできたね」などと小さなことでも、2人ができたことを褒めるようにした。「学校に行きたいのに行けない」と苦しんでいた長女は、3年から通信制高校に転校することを選択。落ち込むこともあったが、大学進学を果たした。長男もつられるように「僕も勉強しようかな」とぽつり。中学3年の途中から別室登校を始め、この春からは高校生だ。

 女性にとって、忘れられないシーンがある。中学の卒業式を終えた長男に、長女が泣きながら「おめでとう」と言った。長女は友人から「あなたがそんな感じだから、弟も行かないんじゃない」と言われ、「私が悪いのか」と苦しんだことがあった。以前、長女からそのことを聞いていた女性は「姉弟で良くも悪くも支え合っていたんだと思った」と目を潤ませる。

専門家からアドバイス 親は「返事が必要ない声掛け」をしてみよう

 きょうだいの不登校に詳しい一般社団法人「不登校支援センター」福岡支部(福岡市)のカウンセラー永島裕さん(40)は「きょうだいで不登校になりやすいと言われるのは、『学校に行かない』という選択肢を知るから」と指摘。「学校で感じるストレスの対処方法として『学校に行かない』という行動を選びやすくなる」と説明する。

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「家庭での会話は自然なコミュニケーションを意識してもらえたら」と永島裕さん=福岡市内で(不登校支援センター福岡支部提供)

 子どもが「学校に行かないなんてずるい」と、不登校のきょうだいを責めるような発言をしたら気を付けたい。「学校生活につらさを感じている場合もある」と永島さん。学校が楽しいかを聞き、勉強やいじめなどで悩んでいたら、学校などとも相談して解決策を考えることが重要だ。

 きょうだいで不登校になると、親のストレスは大きい。永島さんは、あいさつなどの「返事が必要のない声掛け」を提案する。最初は無視されても、返事が返ってくるなど変化を実感できるとストレスも和らぐ。鍵は、親がいかに毎日楽しそうにしているか。「不登校は自分の子育てのせいと思わず、自分の時間をつくるなど自らをケアすることも大事」という。

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