「不登校の先に」反響続々 体験談から見えるヒント 「何もしない」苦しさ、親子の距離感、内申点への疑問…

長田真由美 (2021年3月26日付 東京新聞朝刊)

不登校の先に

 昨年10月から月1回連載している「不登校の先に」。コロナ禍の影響やフリースクール、親の会などを取り上げた過去5回の記事に、多くの反響が寄せられた。親や支援者たちのさまざまな悩みや体験談は、不登校と向き合うヒントもくれる。

読者から寄せられた手紙やメール

死を口にした娘、アイドルが生きる希望に 

 「『何もしない不登校』があることも知ってほしい」。投稿した東京都内の自営業女性(48)は訴える。

 中学3年の娘(15)は小学4年の夏休み明けから不登校に。女性は「休めば休むほど再登校が難しくなる」と焦り、娘を無理やり学校へ連れて行った。その後、娘は体調を崩し、家から出られなくなったという。「『フリースクールに行った』『学校ではない学びの場に出合えた』などの記事を見ると、娘がそうできないことに、私も苦しくなった」と女性は打ち明ける。

 当初は「死にたい」とも漏らした娘。1年ほどたった頃、アイドルグループの握手会に行きたがるようになった。「アイドルに会うことが生きる希望となった」と女性。小学校から紹介されたスクールソーシャルワーカーが家族の相談にも親身に乗ってくれ、娘は中学2年から少しずつ学校に通えるようになった。4月からは高校生だ。女性は「4年間、自宅で過ごしたが、今となっては好きなことをして過ごせたことが娘には良かった」と感じている。

「親も考えを変えて」医師の言葉が染みた

 神奈川県のパート女性(47)は「『不登校は悪いこと』と考えるガチガチの頭だった」と振り返る。「保護者もその考えを変える必要がある」「何をしたらいいか分からないときは何もしないで」-。連載初回で紹介した児童精神科医の高岡健さん(67)の言葉が「わが身に染みた」という。

 息子(16)が中学1年の途中に不登校になった時、女性は「家を居心地良くしたらますます学校に行けない」と考え、テレビやゲームの利用を制限した。息子は反発して口をきかなくなり、「親子関係もどんどん悪くなった。このやり方では無理だと気付いた」と女性。親も楽しみを見つけ、必要なときだけ子どもをサポートしようと考えを変え、買い物や美容院に出掛けるようにした。

 すると中学2年の夏、息子が「勉強やってみようかな。でも一人ではできない」と漏らした。女性は不登校の子ども向けの家庭教師を探して提案。家庭教師と気が合った息子は勉強に励み、今は高校に毎日通っている。女性は「学校へ行かなくても今はたくさんの選択肢があり、世界がある。そう考える人が増えると、親も子ももっと生きやすくなるだろうな」と語る。

行けない子もいる。学校は柔軟な対応を

 内申点を重視する高校入試制度に疑問を持つ声も。愛知県の女性(45)は、中学3年だった娘(15)が昨年春の一斉休校明けから、体調不良となり、保健室登校になった。しかし、「受験があるから教室に戻らなくては」と無理をして教室に通った結果、心身ともに弱り切り、昨秋から不登校になった。

 学校の内申は、テストの結果だけではなく、授業での態度や提出物なども関係する。当時の志望校は一定以上の内申点がないと合格が難しかったという。

 娘は勉強の意欲を失わず、学校の代わりに地元自治体の適応指導教室へ。大学進学を目指し、4月からは通信制の高校で学ぶ。女性は「学校には人と人がつながるなど、勉強以外の意義があることは理解している。ただ、学校に行くことができない子もいる。オンラインでの学びなど、柔軟に考えてほしい」と望む。

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